シェイクスピアのソネット集第18番「君を夏の一日と比べてみようか」Shall I compare thee to a summer’s day を読む。(壺齋散人訳)
君を夏の一日と比べてみようか
君のほうが素敵だし ずっと穏やかだ
夏の荒々しい風は可憐な蕾を揺さぶるし
それに余りにも短い間しか続かない
時に太陽がぎらぎらと照りつけるけれど
その黄金の輝きも雲に隠されることがある
どんなに美しいものもやがては萎み衰え
偶然や自然の移り変わりの中で消え去っていく
でも君の永遠の夏は決して色あせない
君の今の美しさが失われることもない
死神が君を死の影に誘い込んだと嘯くこともない
君が永遠の詩の中で時そのものと溶け合うならば
人間がこの世に生きている限りこの詩も生きる
そして君に永遠の命を吹き込み続けるだろう
これはシェイクスピアのソネットの中でも最も有名になったものだ。シェイクスピアのソネット集は、大部分がある青年を対象に書かれたもので、批評家たちはそれらに、シェイクスピアの同性愛的な感情を嗅ぎ取ってきた。
しかしシェイクスピアは、この青年と始めてあったときから、同性愛的な感情に陥ったのではないらしいことは、1番から17番までのソネットが、青年を相手に処世訓のようなものを説きかけていることからも知られる。
ところが18番目のこの詩を皮切りに126番目までの詩は、がらりと趣向を変えて、青年へのあからさまな愛情を歌っている。この詩はそうした詩の一群のスタートをなすものなのである。
夏はイギリスの季節の中では、最も命に富み、しかも若々しさを感じさせる季節である。シェイクスピアはその夏の一日と青年とを比較して、若さにおいても、美しさにおいても青年のほうが優れていると歌う。しかもその青年の美しさは、詩の中に表現されて永遠性を付与されることによって、その詩が人々の心の中で生きている限り、青年の美しさも滅びることはないと歌う。
詩人が愛する人へのラブコールとして使うには、これ以上に気の利いた言葉はないであろう。
Shall I compare thee to a summer's day?
Shall I compare thee to a summer's day?
Thou art more lovely and more temperate.
Rough winds do shake the darling buds of May,
And summer's lease hath all too short a date.
Sometime too hot the eye of heaven shines,
And often is his gold complexion dimm'd;
And every fair from fair sometime declines,
By chance or nature's changing course untrimm'd;
But thy eternal summer shall not fade
Nor lose possession of that fair thou ow'st;
Nor shall Death brag thou wander'st in his shade,
When in eternal lines to time thou grow'st:
So long as men can breathe or eyes can see,
So long lives this, and this gives life to thee.
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