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東城高く且つ長し:不遇の才能を嘆く(古詩十九首其十二)


古詩十九首から其十二「東城高く且つ長し」を読む。

  東城高且長  東城 高く且つ長く
  逶迤自相屬  逶迤として自づから相屬す
  回風動地起  回風 地を動かして起り
  秋草萋已綠  秋草 萋として已に綠なり
  四時更變化  四時 更ごも變化し
  歲暮一何速  歲暮 一に何ぞ速き
  晨風懷苦心  晨風 苦心を懷き
  蟋蟀傷局促  蟋蟀 局促を傷む
  蕩滌放情志  蕩滌して情志を放にせん
  何為自結束  何為れぞ自から結束する
  燕趙多佳人  燕趙 佳人多く
  美者顏如玉  美なる者 顏 玉の如し
  被服羅裳衣  羅の裳衣を被服し
  當戶理清曲  戶に當りて清曲を理む
  音響一何悲  音響 一に何ぞ悲しき
  弦急知柱促  弦 急にして柱の促れるを知る
  馳情整巾帶  情を馳せて巾帶を整へ
  沉吟聊躑躅  沉吟して聊く躑躅す
  思為雙飛燕  思ふ 雙飛燕と為りて
  銜泥巢君屋  泥を銜んで君が屋に巢くはんことを

東の城壁は高く且つ長く、うねうねとして互いにつながっている、うずまく風が地を動かして起こり、秋草は茂って青々としている、だが季節は巡り、年の暮が近づくのも早い

故人が歌った晨風の詩には臣下の苦しみが盛り込まれ、蟋蟀の詩には身のこだわりを嘆く意がある、そんなこだわりは捨て去ってのびのびと生きよう、自分自身を束縛して生きるのはつまらぬことだ

燕と趙には佳人が多いという、美しいものは顔が玉のようだという、薄絹の衣を着て、戸のところで清曲を弾けば、音の響きは悲しい思いを伝え、弦は勢い余って琴柱がつまるほどだ

思いを佳人にはせて巾帶を整え、打ち沈みながらしばらく佳人の前で躊躇する、願わくばともに飛燕となって、泥を含んでそなたの軒先に巣を作りたいものだ


秋が深まり、年の暮が近づくのを前に、さびしい暮らしを抜け出し、燕趙の美人と楽しく暮らしたい、そんな蕩児の勝手な思いを歌ったものか、燕趙ともに今の河北省にあった土地、美人が多かったのだろう

晨風はもともと隼の類をさし、詩経秦風中の一篇の題名でもある。秦の康公が臣下を見捨てたのをそしった歌。蟋蟀はこおろごを意味し、詩経唐風中の篇名ともなっている。こおろぎの声が歳の暮をつげているのに、不遇のまま才能を伸ばしきれずにかがまりこんでいるさまを嘆いた歌。


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