古詩十九首から其十八「客遠方より來る」を読む。
客從遠方來 客 遠方より來り
遺我一端綺 我に一端の綺を遺る
相去萬餘裏 相去ること萬餘裏なるも
故人心尚爾 故人の心尚ほ爾り
文采雙鴛鴦 文采は雙鴛鴦
裁為合歡被 裁ちて合歡の被と為す
著以長相思 著するに長相思を以てし
緣以結不解 緣とるに結不解を以てす
以膠投漆中 膠を以て漆中に投ずれば
誰能別離此 誰か能く此を別離せん
あなたからのお使いが遠方より来り、わたしに一端の薄絹を送ってくれました、遠く離れていても、あなたはわたしを忘れないで下さったのですね
薄絹の模様は一対の鴛鴦、これを裁って共寝の褥といたしましょう、中に詰める綿は長相思、いつまでも末永く添い遂げる思いをこめましょう、縁には結不解、決しては離れぬとの思いをこめましょう
膠を漆の中に入れたら、だれも引き離すことはできますまい、わたしたちもそのようにありたいものです
夫と別れて暮らす妻が、夫から薄絹を送られた喜びを歌うものである。その薄絹を以て、夫婦共寝のための褥を作り、夫が帰る日にそなえようという、けなげな気持ちが歌いこまれている
長相思は綿の縁語で、綿々とつながるさまを表す、結不解は糸が結び合わさってほどけぬさまをいう、合歡被とならんで、中国人特有の修辞法である