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シェイクスピアのソネット87  Farewell! thou art too dear


シェイクスピアのソネット87  Farewell! thou art too dear for my possessing(壺齋散人訳)


  さようなら 君は私が所有するには価値が高すぎる
  君も自分の値打ちが十分にわかっている
  君の価値の権利証書が自由放免を保障するのだ
  君に対する私の権利は期限切れとなってしまった

  君の同意がなくてどうして君を引き留めえようか?
  私のどこに君に相応しいところがあるだろうか?
  君の富を享受できる根拠が私には欠けている
  君に対する私の権利は振り出しに戻ったのだ

  君が自分の価値を分け与えたのは無垢の気持ちから
  私に与えてくれたのも私を買いかぶってのこと
  君の才能は天真爛漫に育っていったが
  今はよりよい判断に基づいて使うべき時なのだ
    君とともにいた時間は夢の中のようだった
    そこでは私は王であったが 目覚めればただの人だ


この詩は、青年との破局を歌っているようにみえる。そこで古来、青年の裏切りに対するシェイクスピアの嘆きを歌ったものだと解釈されてきたが、シェイクスピアはただ嘆きを歌うだけではない。

一方では青年の美は、自分が独占するには素晴らしすぎると謙遜しながら、他方ではそのような美をつかの間でも享受できた自分は幸せだったと述懐している。


SONNET 87 –William Shakespeare

  Farewell! thou art too dear for my possessing,
  And like enough thou know'st thy estimate:
  The charter of thy worth gives thee releasing;
  My bonds in thee are all determinate.

  For how do I hold thee but by thy granting?
  And for that riches where is my deserving?
  The cause of this fair gift in me is wanting,
  And so my patent back again is swerving.

  Thyself thou gavest, thy own worth then not knowing,
  Or me, to whom thou gavest it, else mistaking;
  So thy great gift, upon misprision growing,
  Comes home again, on better judgment making.
    Thus have I had thee, as a dream doth flatter,
    In sleep a king, but waking no such matter.

too dear:高価すぎる、like enough:恐らく、The charter of thy worth:君に相応しい特権、back again is swerving:振り出しに戻る、misprision:誤解、no such matter:そんなものではない


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