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シェイクスピアのソネット89  Say that thou didst forsake me


シェイクスピアのソネット89  Say that thou didst forsake me for some fault(壺齋散人訳)

  私に欠点があるから見捨てたのだといいたまえ
  それに対しては言い訳することがある
  私が足なえだといいたまえ 動き回るのをやめるから
  だが君がいうことに対してとやかく言うのはやめよう

  愛するものよ 君がどんなに悪しざまに私を扱い
  自分の心変わりに理屈を付けようとしても
  私自身が自分を悪しざまにするのには及ばない
  君の意思がわかったからには もう親しげにするのはやめよう

  君のいるところからは離れていよう
  君の名を口にすることがないようにしよう
  卑しい私がそうすることで君に迷惑をかけたり
  私たちの間柄をうっかりもらしてしまってはいけないから
    君のためなら私は自分自身とも戦う
    君が憎むものを私は決して愛することはない


青年に対するシェイクスピアの態度がみせる卑屈さは、マゾヒズムにも通じるものがある。この詩でも、青年に捨てられながら、その理由を自分が醜いことに帰して、青年の心変わりを恨んだりしていない。

シェイクスピアは青年に捨てられてもなお、青年の心を自分の心として受容する。青年の愛するものを自分も愛し、青年の憎むものを自分も憎む。それがたとえ自分自身のことであっても、青年が憎むならば、自分も自分自身を憎むのだ。


SONNET 89 –William Shakespeare

  Say that thou didst forsake me for some fault,
  And I will comment upon that offence;
  Speak of my lameness, and I straight will halt,
  Against thy reasons making no defence.

  Thou canst not, love, disgrace me half so ill,
  To set a form upon desired change,
  As I'll myself disgrace: knowing thy will,
  I will acquaintance strangle and look strange,

  Be absent from thy walks, and in my tongue
  Thy sweet beloved name no more shall dwell,
  Lest I, too much profane, should do it wrong
  And haply of our old acquaintance tell.
    For thee against myself I'll vow debate,
    For I must ne'er love him whom thou dost hate.

half so ill:半分ほども悪くは、desired change:自分で意図した心変わり、I will acquaintance strangle:もう付き合うのはやめよう、haply:恐らく、


関連リンク: 英詩のリズムシェイクスピアシェイクスピアのソネット

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