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犬と香水瓶 Le chien et le flacon:ボードレール


ボードレール「パリの憂鬱」から「犬と香水瓶」Le chien et le flacon(壺齋散人訳)

  「私の子犬、可愛いワン公、こっちへきて香水の匂いを嗅いでごらん、最高級の店で買ってきたんだぞ。」

  こういうと犬は尻尾を振りながら近づいてきた。それは思うに、この哀れな生き物にとっては、笑いか微笑のサインなのであろう。だが犬は蓋の開いた瓶に、興味深そうに湿った鼻面をくっつけると、突然驚いて後ずさりし、さも非難がましく、私に向かって吠えたのだった。

  「ああ、哀れな奴よ、糞の詰まった箱でもやったなら、お前は夢中で嗅ぎまわり、貪り食ったことだろうに。お前という奴は、私の人生の道連れというには相応しくない。お前はあの大衆に似ている。彼らには香ばしい匂いのする香水など無用だ、丹念に選りすぐった汚物でも与えておけばよいのだ。」


ボードレールにとってネコは愛すべき生き物だった。それは彼が愛した女性たちと同じように愛すべき存在だった。だが犬はそうではなかったようだ。

ネコは人間に媚を売らないでも、主人の愛を獲得できる。それは彼らが女性のように自立していたからだろう。それに対して、犬が尻尾を振って人間に媚び入る様子は、ボードレールの目には不快に映ったのだろう。

犬が香水の価値をわからないのも、ボードレールには腹立たしかった。彼はそのことで、犬を大衆になぞらえたりして、鬱憤を晴らすのだ。


Le chien et le flacon

  "- Mon beau chien, mon bon chien, mon cher toutou, approchez et venez respirer un excellent parfum acheté chez le meilleur parfumeur de la ville."

  Et le chien, en frétillant de la queue, ce qui est, je crois, chez ces pauvres êtres, le signe correspondant du rire et du sourire, s'approche et pose curieusement son nez humide sur le flacon débouché; puis, reculant soudainement avec effroi, il aboie contre moi, en manière de reproche.

  "- Ah! misérable chien, si je vous avais offert un paquet d'excréments, vous l'auriez flairé avec délices et peut-être dévoré. Ainsi, vous-même, indigne compagnon de ma triste vie, vous ressemblez au public, à qui il ne faut jamais présenter des parfums délicats qui l'exaspèrent, mais des ordures soigneusement choisies."


関連リンク: 詩人の魂ボードレール >>悪の華

  • ボードレール Charles Baudelaire





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