ウィリアム・ブレイク「ロゼッティの写本」から「愛を語ってはならない」 Never seek to tell thy Love(壺齋散人訳)
決して愛を語ってはならない
愛とは語られることの出来ないもの
やさしい風がそよぐときも
静かに 見えないようにそよぐように
それなのに私は 愛を語った
心のうちをあの人に語った
震えながら おののきながら
でも彼女は去ってしまった
彼女が私を去ってすぐに
一人の旅人が通りがかった
静かに 人に気づかれないように
旅人は彼女を連れていたのだった
ダンテ・ガブリエル・ロゼッティはさまざまな詩人たちの詩集を、自分で手写しては、それに装丁を施して美しい手書きの詩集にしていたことで知られる。そんなロゼッティが、ブレイクの未刊の詩を一冊にまとめたものが、ブレイクのロゼッティ写本として今日に伝わっている。収められた詩の多くは、「無垢と経験の歌」以降に書かれたものだと推測されている。
Never seek to tell thy Love
Never seek to tell thy love,
Love that never told can be;
For the gentle wind does move
Silently, invisibly.
I told my love, I told my love,
I told her all my heart;
Trembling, cold, in ghastly fears,
Ah! she doth depart.
Soon as she was gone from me,
A traveller came by,
Silently, invisibly:
He took her with a sigh.
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