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列車のトイレの穴から産み落とされた子


インドで起きた不思議な話だ。列車のトイレを使っていた妊娠中の女性が、それとは意識せずに子どもを分娩し、その子どもが走っている列車のトイレの穴をすり抜けて、地上に産み落とされたというのだ。その様子をロイターが伝えているので、紹介したい。

女性は子どもを分娩したことについて、はっきりした認識がなかったという。ただ急にめまいに襲われ、その場に倒れた。ややして意識が戻ると、始めて事態の重大性に気づき、急いで助けを求めた。列車は急停車して、もときた道を引き返し、また付近の駅にも応援を求めて捜索した結果、生まれたばかりの子は、奇跡的に怪我もせず、線路内の敷石の上に寝そべっていたそうだ。

女性はカルビさんといって、33歳になるラジャスタン州の人だ。生まれたばかりの子どもと一緒にアーメダバードの病院に収容されているが、子どものほうは大事をとって、目下集中治療室にいるという。落下に伴う身体への障害は見られないらしいが、予定より二ヶ月も前に出生したので、未熟児としての治療を受けている。

それにしても、不思議な話だ。急な出産はよくあることだが、今回の場合、陣痛などの前触れもなく、また痛みなどの感覚もなく、便を排出するような気持ちで子どもを分娩したということらしい。

走っている列車から落下した子どもに怪我がなかったというのも、幸いながら不思議な話だ。一昔前の日本と同じく、今日のインドの列車は汲み取り式ではなく、下へ向かって穴が開いていて、汚物はその穴を通って地上に振りまかれるようにできている。だから生まれた子どもも、そのまま地上に振りまかれたのだが、何がどう幸いしたのか、たいした怪我もせずに無事地上に横たわった。

母親の産道から出てきたときには、頭が先だったろうから、常識的に考えれば、子どもは頭を先にして便器の穴をすり抜け、そのまま地上に落ちたはずである。しかも動いている列車の底からである。普通なら、かなりの衝撃にさらされるはずだ。

列車の底と地面との間にどれくらいの空間があったかはわからぬが、子どもは穴を出た後地上に達するまでの間、何らかの幸運な事情に助けられて、激しい外力にもさらされず、非常に緩やかな運動をしながら、地上にゆったりと横たわることができたのだろう。

この奇跡の子は女の子だそうだ。まだ名前は付けてもらっていない。こんな不思議な生まれ方をしたのであるから、将来人びとに福音をもたらすような人になるかもしれない。

少なくとも、この事故を契機に、インドの列車のトイレも日本並みに近代化されることを期待しよう。大して金のかかることではないはずだ。


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