古詩十九首其六「涉江采芙蓉」
涉江采芙蓉 江を涉りて芙蓉を采る
蘭澤多芳草 蘭澤 芳草多し
采之欲遺誰 之を采りて誰にか遺らんと欲する
所思在遠道 思ふ所は遠道に在り
還顧望舊鄉 還顧して舊鄉を望めば
長路漫浩浩 長路 漫として浩浩たらん
同心而離居 同心にして離居せば
憂傷以終老 憂傷 以て終に老いなん
河を渡って蓮の実をとります、蘭の茂った沢には色々な草が生えています、これをとって誰に差し上げましょう、ほかならぬわたしの思い人ははるかな場所にいるのです
あの人が振り返って故郷のほうを望むと、そこには長い道がはるばると横たわっているでしょう、心を一つにしながら別れ別れでいなくてはならない、こんな悲しい思いを抱いたまま年老いていかれるのでしょう
蓮の実をとって誰かに差し上げようにも、自分の恋人ははるか離れた地にある、そんな別れの寂しさを歌った女の歌と思われる