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暗躍する闇金融


悪質な闇金融の被害者が絶えない。その実態ははっきりとはわかっていないが、今や大都市圏を超え、全国規模に拡大しているようだ。被害者も、老人、母子世帯、生活保護受給者など、経済弱者といわれる層にまで広がっている。なぜこうした金のない人々を相手に、闇金融業者がなけなしの金を巻き上げるのか、また何故そんなことが可能なのか、そのからくりを考えてみたい。

闇金融に共通した手口は二つある。一つは法定金利を超える法外な利息だ。利息が高いから元本はなかなか減らない。元本が減るようなケースは、借り手にまだ借金の余裕があるということだから、業者はギリギリまで貸付を進め、借り手から絞れるだけの利息を搾り取ろうとする。この連中にとっては、元本の回収が目的ではなく、利息を際限なく搾り取ることが目的なのだ。

二つ目は借り手の資金源を物理的に管理するやり方だ。これは主に年金生活者や生活保護受給者を対象にして行われる。年金受給者の場合には年金手帳や印鑑など、生活保護受給者の場合には生活保護手帳など、受給に必要なものを取り上げてしまうことだ。業者は受給の日ごとにそれらを借り手にわたし、それでもって受給した金をその場で回収するというわけである。だから取りはぐることはない。

このほか、脅迫を用いた悪質な取立ては、昔からなされていたことだが、最近は法の規制を考慮してますます巧妙になっているという。また回収が難しい場合には、他の金融業者から金を借りさせ、それで回収するやりかたも依然横行している。こうして借り手は多重債務の泥沼にはまり込んでいく。

これらはいうまでもなく、法で禁止されていることばかりである。利息制限法の趣旨が徹底されて、法定利息を超えた利息は無効とされ、場合によっては元本を返す必要もないことになっている。また、年金手帳や生活保護手帳を取り上げることは刑法上の犯罪行為である。

にもかかわらず、悪質な闇金融はなかなかなくならないどころか、被害者は増える一方だというのだ。

貸金業への規制が強化されて、業界内部に地殻変動が起こっているらしい。比較的大手の貸金業者は、貸付のリスクを小さくするため、相手の返済能力を考慮するようになった。一方マージナルな業者は、今までのようなやり方では、なかなか生き残っていけない。

そこで貸金業のルールに乗れない業者が業界からはみ出し、闇金融の市場を構成するようになった。借り手は大手の貸金業者から排除された貧しい人々である。これらの貧しい人々のうち、年金や生活保護の受給者は確実な収入源があるから、やり方次第では取りはぐれのないビジネスをすることができる。

こうしていまや、ギリギリの貧しさの中で生きている人々が、闇金融のターゲットとなっている。金がないために、死ぬまで金にたたられるのである。

こうした人々の中には、貧乏なゆえに誰にも相手にしてもらえない人が少なくない。彼らが苦しんでいるからといって、気にする人がそう多くいるわけではない。


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