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ナメクジに塩


雨もよいの鬱陶しい日が続いている。今年は例年より半月以上も入梅が早かった。雨の量も多くなりそうだ。これは春以来の傾向で、今年の四月は関東地方で、観測史上最も多い降雨量を記録した。

梅雨時によく見かけるものにナメクジがある。この季節以外にも当然活動しているのだろうが、何故か梅雨時になると、人の目に触れることが多くなる。縁側の板の上に、湿った筋模様を残しながら、ゆったりと異動していく姿はグロテスクの限りだ。目も手足もなく、ぬめぬめとした塊のように見えるので、一層そのような印象を与えるのだろう。

ナメクジはカタツムリの近縁種だそうだ。カタツムリの殻を失ったものをナメクジだと考えてよい。それにしてはカタツムリにはある大きな触覚がナメクジにはないなど、両者はだいぶ異なった印象に見える。

カタツムリは南欧では好んで食用にされる。ナメクジもカタツムリの仲間であるからには食えないわけがない。実際アラスカなどでは食われてもいるらしい。ただ料理法を間違えると簡単に溶けてなくなってしまうので、気をつけなければならない。熱湯で塩茹でするのがいいようだ。

生きたナメクジに塩を振りかけると、見る見る間に溶けてなくなることは、子どもでも知っている。筆者の子どもの頃は、そのことが不思議でならなかった。ぬめぬめとして形も定まらないが、れっきとした生き物が、何故塩をかけたくらいで溶けてなくなってしまうのか。

その理由を尋ねまわっているうちに、塩には脱水作用があり、ナメクジはそれによって水を抜かれるから、溶けてなくなるように見えるのだと教えられた。ナメクジの中身は殆ど水分だから、脱水されると後には何も残らないというのだ。ナメクジに限らず、青菜だって塩を振りかければくたんとなる。それと同じ理屈らしい。

では何故、塩には脱水作用があるのか。それは浸透圧の原理が働くからだと教えられた。浸透圧とは、圧力の高い物質が、圧力の低い物質に浸透していくことをいうらしい。塩は水よりも浸透圧が高いから、塩分がナメクジの中の水分を押しのけて、ナメクジの中を占領する。その結果ナメクジは水を抜かれてカラカラになるということらしい。

わかったような、わからないような、複雑な気分がしたものだ。

筆者の子どもの頃には、ジライヤの物語が流行っていた。その中にナメクジが出てくる。ナメクジは蛇には強いがカエルには弱い。一方カエルはナメクジに強い代わりに蛇には弱い。その蛇はカエルを食ってしまう代わりに、ナメクジには弱い。ジャンケンと同じ三すくみ構造だ。

ナメクジはとかくおどろおどろした姿に見えるが、実は触覚もあり、足もあるということだ。我々の目に見えないだけなのだろう。


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