人が自分の老化を実感するのには、様々なきっかけがある。まず外貌だ。髪の毛が白くなり、肌がたるんで、そこここに目障りな皴やしみができる。目には輝きがなくなり、何となくうつろな表情が、老いを、自分にも他人にも感じさせる。
内面的にも老いの進行は実感される。記憶力が衰え、それにともなって認知能力も衰える。特に直近の出来事の記憶がすぐに頭から消え去って、つい今しがた自分の考えていたことや、意思していたことが、雲散霧消したように意識から消滅する。
老化の中でももっともドラスティックなのは、性的な意欲と能力の減退だろう。男の場合には、これは勃起不全という形で現れる。男の性欲と性的な活力は、ペニスの勃起能力に比例するとまでいわれるから、男は自分のペニスが立たなくなると、そこに決定的なものを感ずる。
男のペニスが勃起するためには、大量の血液がペニスにくまなく供給されることが必要だ。だから血流に不全が生じると、自然に勃起能力は減退する。血流を阻害する要因としては、心臓病などの血管障害や糖尿病があげられるが、自然の老化現象も血流を低下させる方向に働く。人は、特に男の場合には、老化や病気によって性的能力を失いやすいのだ。
ところが脳の機能が、それをいかに活用するかによって、向上したり低下したりするのと同様、ペニスの機能も、使い方次第で、大きな個人差があるという。
フィンランドのコシマキ教授らのグループは、55歳から75歳までの約1000人の男性について、彼らの性生活とペニスの勃起能力との関連を、数年にわたって追跡調査した。
その結果によれば、週に一度セックスしているグループはそうでないグループに比較して、二倍の勃起能力を示した。週に2度以上セックスしているグループは、何と4倍以上の勃起能力を示すという。
これが具体的にどんな事態を意味しているのか、筆者などは今ひとつイメージがわかないが、要するにしょっちゅうセックスしている老人は、ペニスの勃起力も豊かだということを意味しているらしい。そのような老人の男は、いわゆる朝立ちも毎日のように起こるのだろう。
人間にとってセックスは、生きる喜びのうちにも、もっとも根源的なことだ。だからその喜びをいつまでも失わないでいることは、この上もなく素敵なことだ。
人間は生きる喜びに満たされている間は、少年のように生き生きと、しかもみずみずしく生きていられる。そのような老人の男は、自分が若々しくあるとともに、その若さを配偶者にも伝えて生きる喜びを分かち合い、その輝きによって周囲からも一目置かれるに違いない。
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