詩経国風:秦風篇から「無衣」を読む。(壺齋散人注)
豈曰無衣 豈に衣無しと曰はんや
與子同袍 子と袍を同じうせん
王于興師 王 于(ここ)に師を興す
脩我戈矛 我が戈矛(かぼう)を脩めて
與子同仇 子と仇を同じうせん
豈曰無衣 豈に衣無しと曰はんや
與子同澤 子と澤を同じうせん
王于興師 王 于(ここ)に師を興す
脩我矛戟 我が矛戟(ぼうげき)を脩めて
與子偕作 子と偕に作さん
豈曰無衣 豈に衣無しと曰はんや
與子同裳 子と裳を同じうせん
王于興師 王 于(ここ)に師を興す
脩我甲兵 我が甲兵を脩めて
與子偕行 子と偕に行かん
衣がないなどというのはやめよう、お前と一緒にこのどてらを共有しよう、王様が軍隊をお出しになる、いざ我らの戈矛を手入れして、お前と一緒に敵に立ち向かおう
衣がないなどというのはやめよう、お前と一緒にこの襦袢を共有しよう、王様が軍隊をお出しになる、いざ我らの矛戟を手入れして、お前と一緒に戦おう
衣がないなどというのはやめよう、お前と一緒にこのもすそを共有しよう、王様が軍隊をお出しになる、いざ我らの甲や武器を手入れして、お前と一緒に進軍しよう
秦王が戦を始めるに当って、兵士が覚悟を決めるのを歌ったものである。戦国時代の諸国のうちでも、秦の兵は勇猛なことで知れ渡っていた。その強さは、一人一人が互いに結束していたことにある。この詩はその結束の固さを歌っている。
戈と矛はともにホコのこと、澤は下着、師は軍隊、甲兵は甲冑と武器