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シェイクスピアのソネット29 When, in disgrace with fortune


シェイクスピアのソネット29 When, in disgrace with fortune and men's eyes(壺齋散人訳)

  運命にも他人の目にも見放され
  我が身の不遇を一人嘆きながら
  無益な叫びで聞く耳持たぬ天を煩わし
  つくづく自分を眺めては身の不運を呪うとき

  豊かな人を見ては自分もそうありたいと願い
  自分も美男子で 多くの友人を持ちたいと思う
  この男のような才能と あの男のような見識を望み
  自分自身の境遇には決して満足することがない

  こんな思いで自分に嫌気がさすようなときにも
  君のことを思うと 私の心は弾み
  夜明けのひばりのように 陰気な大地から舞い上がり
  天国の門に向かって讃歌を歌うのだ
    君の甘美な愛を思い出すと心が豊かになり
    もう王たちと立場が変わりたいなどと思わないのだ


この詩の中で、シェイクスピアは自分の身の不幸をことさらに語っているが、それが単に修飾的な意味合いに過ぎないものなのか、それともシェイクスピアに実生活を反映したものなのか、よくわかっていない。

この詩を書いたのは、「リア王」や「アセンスのタイモン」の執筆時期と重なっているといわれる。そうだとすれば、この時期のシェイクスピアはかなり深刻なメランコリーに陥っていた形跡があるから、そうした背景がこの詩の中にも反映しているのかもしれない。

だがシェイクスピアは最後に、自分の不幸も君の甘美な愛の前では、何者でもなくなると、愛人をたたえることで詩を締めくくっている。


SONNET 29 –William Shakespeare

  When, in disgrace with fortune and men's eyes,
  I all alone beweep my outcast state
  And trouble deaf heaven with my bootless cries
  And look upon myself and curse my fate,

  Wishing me like to one more rich in hope,
  Featured like him, like him with friends possess'd,
  Desiring this man's art and that man's scope,
  With what I most enjoy contented least;

  Yet in these thoughts myself almost despising,
  Haply I think on thee, and then my state,
  Like to the lark at break of day arising
  From sullen earth, sings hymns at heaven's gate;
    For thy sweet love remember'd such wealth brings
    That then I scorn to change my state with kings.

in disgrace with fortune:運命の女神に見放される、men's eyes:in disgrace in men’s eyes、beweep:嘆き悲しむ、look upon myself:自分自身の惨めな境遇を省みる、Featured like him:彼と同じような姿になる、that man's scope:あの男の能力、Haply:たまたま、


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