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月と地球:探査衛星かぐやからの報告


月の探査衛星、正式には月周回衛星「かぐや」から送られてくる報告が、月と地球の歴史に関する貴重な情報を提供してくれるようになった。かぐやが撮影した月面の映像は、世界中でもっとも緻密なものなので、科学者たちは地球にいながら月をつぶさに観察できるようになったのだ。

そのもっとも有益な部分は、月の裏側まで知ることができるようになったことだ。かぐやから子どもの衛星「おきな」を切り離し、双方の位置関係を反射鏡のように設定して、月の裏側を撮影する技術によってである。

その結果わかったことは、月の地球を向いた側とその裏側では、景観が全く違っていることだ。月のこちら側には、うさぎの形に見える模様があるが、裏側にはそれがなく、のっぺりして見える。

うさぎの模様を描いている部分は、巨大なクレーターに地中から湧き出した溶岩が積もった跡だ。溶岩は黒いので、その部分が重なってうさぎのように見えるのだ。一方、裏側にはクレーターは沢山見られるが、溶岩が積もったものはない。それゆえ全体として白く見える。

この違いは、月の重力分布の影響によるものだ。地球に向いた部分には地球の重力がより強く働くので、月の内部(地中とはいえない)の溶岩はそちらの方向へと引き寄せられる。その結果こちら側のクレーターに溶岩が湧き出し、うさぎの模様となったのだ。

重力という点ではこれまで、潮の満ち欠けのように、月の地球に対する影響の方に注目が集まっていたが、当然のことながら、地球の月に対する重力の影響も思いがけない結果をもたらしていたわけである。

月と地球は46億年前に兄弟星になった。それ以前には原始地球というものが存在していた。その星は既に、表面が水で覆われていたと推測されている。

この原始地球に46億年前巨大な天体が衝突した。その結果原始地球は破裂し、おびただしい破片とともに、水分まで蒸発させてしまった。原始地球の周りに漂っていた岩石からは、やがて月が形成される。その際、地球の周りに飛散した水分は地球の重力に引き寄せられて、再び海を形成した。しかし月は重力が軽かったので、水分を引き寄せることができず、水のない星になってしまった。こう考えられてきた。

ところが月にも水があったことが最近の研究でわかってきた。月にあるオレンジソイルというものに、水分が閉じ込められていたからだ。だから一時期月にも水はあったが、長い歴史の中で蒸発してしまったのだろうと推測されるようになった。蒸発したのはやはり、月の重力が十分でなかったからだ。

月の表面にあるおびただしい数のクレーターは、地球のクレーターについても知るきっかけをもたらしてくれる。地球のクレーターは、地表の変化によって今では見分けがつかないものが多いが、恐らく月と同等かそれ以上のクレーターがあったはずなのだ。

地球のクレーターでもっとも有名なのは、ユカタン半島にあるチクシュルブ・クレーターだ。このクレーターをもたらした天体の衝突が、恐竜を死滅させる原因を作ったのだろうと推測されている。


関連リンク: 地球と宇宙の科学

  • 惑星誕生のメカニズム

  • 地球に似た軌道を描く惑星:太陽系の未来の姿





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