« ガルシア・マルケス、カストロと散歩 | メイン | 大伴旅人:酒の讃歌 »


風流の歌人大伴旅人


山上億良が多感な老官人だったとすれば、大伴旅人には風流な大官という趣がある。旅人は名門大伴氏の嫡男として生まれ、父親同様大納言にまで上り詰めた。人麻呂や億良とは異なり、古代日本の貴族社会を体現した人物である。そのためか、大伴旅人の歌にはおおらかさと、風雅な情緒が溢れている。

大伴氏は物部氏と並ぶ武門の名門である。一時期蘇我氏に圧迫されて振るわなくなったが、壬申の乱での勲功があって、天武以降再び栄えていた。

この武門の家に、どういうわけか教養のある人物が輩出した。旅人の妹坂上郎女は多情な女流歌人であったし、子の家持はいうまでもなく、万葉を代表する歌人である。旅人も若い頃から詩や和歌を作っていたらしいが、残念ながらそれらは散逸して残されていない。今に伝わる大伴旅人の作品は、大宰府の師であった老年以降のものばかりである。

大宰府に赴任したとき、大伴旅人は既に六十を過ぎていた。北山茂夫によれば、決して左遷ではなかったが、旅人にとっては意に沿わぬことであったらしい。老年を迎えていた旅人にとって、都を遠く離れた九州で暮らすことは、精神的にも体力的にもつらいことだったのであろう。

だがここで、大伴旅人は山上億良や僧満誓らと出会う。その出会いは、日本の詩歌にとっては幸福なことであった。彼らは互いに刺激しあい、老年にしてなお文芸への情熱を奮い立たせながら、多くの佳作を作るに至るからである。

ここでは、そんな大伴旅人の歌を読み解いていきたいと思う。


関連リンク: 万葉集を読む

  • 大伴旅人:亡妻をしのぶ歌(万葉集を読む)

  • 大伴旅人:梅花の宴(万葉集を読む)

  • 大伴旅人:松浦川の歌と松浦佐用姫伝説

  • 大伴旅人:酒の讃歌

  • 大伴家持

  • 防人の歌(万葉集を読む)

  • 東歌の世界(万葉集を読む)

  • 乞食者の歌(万葉集を読む)





  • ブログランキングに参加しています。気に入っていただけたら、下のボタンにクリックをお願いします
    banner2.gif


    トラックバック

    このエントリーのトラックバックURL:
    http://blog.hix05.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/150

    コメントを投稿

    (いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)




    ブログ作者: 壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2006

    リンク




    本日
    昨日