この夏、国際宇宙センターが不思議な雲を捉えた。その雲は地球の先端部、大気圏が宇宙空間と接するところに浮かんでいた。高度でいえば7万6千メートルから8万5千メートルの上空にあたる。通常の雲が発生するのはせいぜい1万8千メートルの上空が限度とされるから、これは非常に珍しい雲といえる。
科学者たちはこの雲が発生したメカニズムについて、さまざまな推測をしている。
まずこの雲が果たして水分でできているのかという点について。通常の状態ではこの高度での水分はほとんどゼロにちかい。サハラ砂漠より1億倍も乾燥しているといわれる。だから水分がここまで届くには何か特別の事情がなければならない。
ある科学者は、極地圏の上昇気流がここまで水蒸気を運んだのではないかと推測している。南北両極地においては、百万分のいくつかの割合で、水分がはるか上空に向かって放出されているというのである。それが地球の先端まで届いてこの雲を形成したのではないか、というわけである。
別の学者は、酸化メタンがこの雲を作ったのではないかと推測している。大気中のメタンの量はこの100年の間に倍増している。それが密度を高めてこの雲になったのではないか、というわけである。
どちらも、地球温暖化が、この雲の発生メカニズムに影響していると考えている。
ところで、この高度での雲の発生はこれまでにも見られなかったわけではない。1883年に爆発したインドネシアのクラカトア火山は大量の灰を大気中に排出し、それが地球の先端部に雲を作った。
また最近では、人工衛星から漏れ出た水によって雲ができた例もいくつかある。
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