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月を舞台にした不動産ビジネス


月の表面の土地を不動産取引の舞台にして、ビジネスを展開している男がいるそうだ。その男とは、ネヴァダの実業家デニス・ホープといい、月の表面1エーカーあたり20ドルで売っているという。Making a mint out of the Moon : By Nick Davidson BBC

信じられないような話だが、ビジネスは順調で、これまでに40万エーカー以上の土地(月面というべきか)を売り、900万ドルを稼いだという。顧客の中には、ハリウッドのスターや大手実業家もおり、また、ロナルド・レーガンやジミー・カーターも、彼から月の土地を買ったというから驚きだ。ブッシュ大統領も彼のビジネスに投資しているといわれている。

ただの遊びでなかったとしたら、何故こんなビジネスが成り立つのか、その法的根拠ははっきりしないが、彼自身は、ヨーロッパからアメリカにやってきた彼の祖先たちがしたと同じことを、自分もしているのだと主張している。つまり誰からも占有されていない土地は、最初に権利を主張した者の所有になるという理屈だ。同じ理屈で,彼は月のほか太陽系の七つの惑星と、その小惑星の所有権も主張しているそうである。

売買のやり方は、地球上における不動産取引とはだいぶ趣が違う。土地を測量して登記する代わりに、彼は月の地図なるものを顧客に見せ、その1点に相当する月の部分に向かって目配せをすることで、所有権の移転を宣言するのだそうだ。世の中は広いというが、面白い男もいたものだ。

こんなビジネスが出現するようになったのは、人類による月の利用が現実味を帯びてきたからだ。アメリカは2020年までに月に長期的な滞在基地を構築する計画を発表しているし、中国・ロシアも似たような計画を準備中だ。ヨーロッパやインドも、月の資源に重大な関心を抱いている。

人類の到達した技術を以てすれば、近い将来、月との間を行き来することは不可能ごとではない。各国の関心は、そうなった場合、単に科学的な調査の対象としてばかりでなく、新たなビジネス・チャンスの場として、月を利用しようというものである。

各国の関心の焦点は月の持つ資源だ。とりわけエネルギー源としての価値である。月に大量に存在するヘリウム3という物質は、クリーンで効率のよいエネルギー資源として、ひときわ注目を集めている。1トンのヘリウム3で、英国の年間エネルギー消費量の6分の1がまかなえるという。この物質は他の重金属類と違って、比較的運搬しやすいので、地球に持ち込むことも難しくはない。

月に限らず、人類による天体へのアプローチについては、国連が1967年に定めた条約があるが、詳細な秩序が整理されているわけではない。今後、月をめぐる各国の競争が加速すれば、その利用のあり方を巡って衝突の起こる可能性も高い。いまのうちから、月の利用を巡る国際的な法的枠組みを整理しておく必要があるのかもしれない。


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