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詩人の魂




2008年6月 5日

ナルシスは語る Narcisse Parle :ポール・ヴァレリー

ナルシスは語る Narcisse Parle (ポール・ヴァレリーの詩:壺齋散人訳)

  兄弟たちよ 悲しき百合よ お前たちの裸体に
  求められたわたしは 美に煩悶する
  そしてニンフよ 泉の精よ お前に向かって
  わたしは虚ろな涙を純粋の沈黙に捧げるのだ

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若きパルク La Jeune Parque :ポール・ヴァレリー

若きパルク La Jeune Parque (ポール・ヴァレリーの詩:壺齋散人訳)

  風も吹かないのに このすすり泣くような音は何でしょう?
  この時刻 ひっそりと 星空の下で泣くのは誰?
  泣こうとするわたしの傍近くで

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2008年6月11日

蜜蜂 L'Abeille :ポール・ヴァレリー

蜜蜂 L'Abeille (ポール・ヴァレリーの詩集「魅惑」から:壺齋散人訳)

  お前の針が 蜜蜂よ
  どんなに繊細で どんなに致命的でも
  わたしはただ 薄紗のような眠りで
  お前の一撃を受け止めるだけだろう

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2008年6月13日

歩み Les pas :ポール・ヴァレリー

歩み Les pas (ポール・ヴァレリーの詩集「魅惑」から:壺齋散人訳)

  お前の歩みが 我が沈黙の子どもたちよ
  厳かに また緩やかに床を踏んで
  用心深いわたしの寝床の方へと
  静かに 冷ややかな音をたてて近づいてくる

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2008年6月18日

眠る女 La Dormeuse :ポール・ヴァレリー

ポール・ヴァレリーの詩「眠る女」 La Dormeuse (壺齋散人訳)

  どんな秘密を心の中で燃やしているのか?
  わたしの女友達 優しい顔で花の香りを呼吸する人よ
  どんなものを食べたおかげで その体内の温かみから
  眠れる女のこの輝きが生まれてくるのか?

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風の精 Le Sylphe :ポール・ヴァレリー

ポール・ヴァレリーの詩「風の精」 Le Sylphe (壺齋散人訳)

  見えず 知られず
  わたしは香り
  生き生きと また消え消えと
  風に乗ってやってきます 

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2008年6月25日

柘榴 Les Grenades :ポール・ヴァレリー

ポール・ヴァレリーの詩「柘榴 」Les Grenades (壺齋散人訳)

  熟した実の過剰さに負けて
  開きかけた硬い柘榴
  あたかも賢者の額から
  思想がはじき出たかのようだ

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2008年6月26日

消えうせたワイン Le vin perdu :ポール・ヴァレリー

ポール・ヴァレリーの詩「消えうせたワイン」Le vin perdu (壺齋散人訳)

  いつだったか またどこだったか
  わたしは大海の中に向けて
  虚無への捧げもののように
  少しだが貴重なワインを注いだ

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2008年7月 3日

イリュミナション Illuminations :ランボー最後の散文詩集

ランボーの散文詩集「イリュミナション」が始めて発表されたのは1886年、雑誌「ヴォーグ」紙上においてである。そのときランボーはまだアフリカで生きていたが、この発表に関与した形跡はない。これを編集したのはグスタフ・カーンとフェリックス・フェネアンであるが、彼等は何らかのルートで手に入れたランボーの散文詩篇に加え、1872年代に書かれた韻文12編も一緒に発表した。

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洪水の後 Après le deluge :ランボー「イリュミナション」

洪水の後 Après le deluge (ランボー「イリュミナション」から:壺齋散人訳)

  洪水の記憶が覚めやらぬ頃

  一匹の兎がイワオウギとツリガネ草の繁みの中に立ち止まり
  くもの巣の合間を通して虹に祈りを捧げた

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2008年7月10日

寓話 Conte :ランボー「イリュミナション」

ランボー「イリュミナション」から「寓話」 Conteを読む。(壺齋散人訳)

  王子には ただ闇雲に寛大であろうとしていたことが
  なにか馬鹿げたことのように思えた。
  彼はすばらしい愛の革命を予見したのだった。
  そして女たちには飾り立てた媚以上のものが
  期待できるはずだと思った。
  彼は真実が知りたかった
  本質的な欲望と充足のときを。
  それが異常な信念であろうとなかろうと、知りたかったのだ。
  少なくともそのための人間としての能力は十分に持っていた。

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生活 Vies :ランボー「イリュミナション」

ランボー「イリュミナション」から「生活」Vies (壺齋散人訳)

  おお 聖地の大道 寺院のテラスよ!
  俺に予言を授けてくれたあのバラモン僧はどうしただろうか?
  あの頃、あの場所については、俺にはまだ老女たちの姿が思い浮かぶのだ。
  俺は覚えている 銀色の太陽の時間が川のあたりを流れ、
  野原の中であいつの手が俺の肩にかかり、
  二人して爪先立ちながら胡椒畑で抱き合ったことを。
  - 赤い鳩が俺の思考の周囲を飛び回る
  - 俺はここに追放されてきて、
  文芸史上の傑作劇を演じるための舞台をこしらえてみた。
  諸君には前代未聞のすばらしい劇をお見せしよう。
  諸君がそこからどんな宝物を引き出すか、俺は見届けよう。
  結果はよくわかっている。
  俺の叡智は、カオスのように侮られるが、
  諸君に取り付いている無感覚に比べれば、俺の無内容などけちなものだ。

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2008年7月17日

出発 Départ :アルチュール・ランボー「イリュミナション」

ランボーの「イリュミナション」から「出発」 Départ (壺齋散人訳)

  見飽きた いたるところにわだかまっている幻影
  もう沢山だ 昼も夜も一日中いつでも街の喧騒だ
  十分わかっている 人生の節目 ―おお喧騒よ 幻影よ!
  新たな情愛と騒音に向けて出発だ!

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王権 Royauté :ランボー「イリュミナション」

王権 Royauté :ランボー「イリュミナション」から(壺齋散人訳)

  ある晴れた朝 善良な市民たちに取り囲まれ
  身なりのよい男と女が 広場に向かって叫んでいた
  「諸君 わしはこれを女王にしたいのじゃ!」
  「わたしは女王様になりたいの!」
  女はこう叫んで身を震わした
  男は啓示と試練について 友人たちに語った
  二人は身を寄せ合って悶え苦しんだ

  実際その朝 二人は王と女王だった
  カーマインの釣り花が家々の窓を飾り
  午後には 二人して棕櫚の庭園から進み出てきたのだった

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2008年7月24日

ある理性に A une raison :ランボー「イリュミナション」

ある理性に A une raison (ランボー「イリュミナション」から:壺齋散人訳)

  お前の指が太鼓をひと叩きすると
  あらゆる音が飛び出し 新しいハーモニーが生じる

  お前がひと歩きすると 新兵たちの行進のように勇ましい

  お前が頭の向きを変えると 新しい愛が生まれる
  お前が頭をもとに戻すと そこにも新しい愛が生まれる

  「運命を変えよう 疫病を克服してやり直そう」
  子どもたちがそうお前に歌う
  「肝心なのは運と意欲さ」
  皆はお前にそういう

  時が熟せば どこへでも行くさ

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2008年7月25日

街 Ville :ランボー「イリュミナション」

街 Ville (ランボー「イリュミナション」から:壺齋散人訳)

  俺は大都市と称されるこの街の一時的な滞在者だし
  したがっていささかも不平があるわけではない
  家具は変な趣味でごたごた飾られてはいず
  家の外観は都市計画に従って皆一様だ

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2008年7月31日

ヴァガボンド Vagabonds :ランボー「イリュミナション」

ランボーの「イリュミナション」から、ヴァガボンド Vagabonds (壺齋散人訳)

  憐れな兄貴よ!こいつのおかげでどれほど眠れぬ夜を過ごしたことか!
  「俺は人生にまじめに取り組んでこなかった。
  俺は人生を甘く見ていた。
  こんなことをしていたら人生から追放され、奴隷の境遇に陥ってしまう。」
  兄貴は俺を運がない奴だといい、異常なほど純真だという。
  そういってあやしい理屈を付け加えるのだ。

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夜明け Aube :ランボー「イリュミナション」

夜明け Aube (ランボー「イリュミナション」から:壺齋散人訳)

  俺は夏の夜明けを抱いた。

  宮殿の前には、まだ動いているものは何もなかった。
  水面は動かず
  森の小道には深い影が落ちていた。
  俺は熱い息を弾ませながら、歩いた。
  宝石たちが顔を見合わせ、翼が音もなく舞い上がった。

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2008年8月 7日

花々 Fleurs :ランボー「イリュミナション」

ランボーの「イリュミナション」から「花々」 Fleurs (壺齋散人訳)

  黄金の台の上から
  - 絹の紐や、灰色のガーゼや、緑のビロード
  ブロンズの太陽のように黒ずんだクリスタルに囲まれ
  - 俺は、銀や目や髪の透かし模様をつけた絨毯の上で
  一本のジギタリスが開くのを見た

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海景 Marine :ランボー「イリュミナション」

ランボー「イリュミナション」から、「海景」 Marine (壺齋散人訳)

  銀と胴でできた戦車
  鋼鉄と銀でできた船のへさきが
  波を打って進み
  バラの切り株を根こそぎにする
  大地の潮流
  引き潮の巨大なわだちが
  うねりながら東へと広がり
  林立する木立
  防波堤に向けて押し寄せる
  そしてその先端には光の渦が逆巻くのだ

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