苦悩 Angoisse :ランボー「イリュミナション」
ランボーの「イリュミナション」から、苦悩 Angoisse(壺齋散人訳)
俺の野望が次々と砕かれていくのを、
あいつが果たして容認するだろうか?
- 安楽な最後が苦痛の日々を償い
- 成功の一日が俺たちの恥辱をなだめてくれるように!
ランボーの「イリュミナション」から、苦悩 Angoisse(壺齋散人訳)
俺の野望が次々と砕かれていくのを、
あいつが果たして容認するだろうか?
- 安楽な最後が苦痛の日々を償い
- 成功の一日が俺たちの恥辱をなだめてくれるように!
ランボーの「イリュミナション」から「戦争 」Guerre (壺齋散人訳)
少年時代、ある種の空が俺の視力を鍛えてくれた
その空のあらゆる陰影が俺の表情にも反映し
様々な現象が生起した。
今では
屈折した永遠の瞬間と無限定の定理とが
俺を駆り立てて、この世界を通過させる
ここでは俺は、礼儀を以て遇され、
妙な子どもたちに尊敬され、大いなる愛を注がれるのだ。
俺は戦争を夢見る
権利と力との、思いがけぬロジックの戦いだ。
音楽の一節のようにたわいない
ランボーの「イリュミナション」から「ボトム」 Bottom (壺齋散人訳)
俺の寛大な性格にとっても、この世は余りにも刺々しい
そこで俺は女主人の家で目を覚ますと
灰色の巨大な鳥となって天井からぶら下がり
宵闇の中に羽根を垂れていたのだった
ランボーの「イリュミナション」から「デモクラシー Démocratie」 (壺齋散人訳)
薄汚れた風景の中を旗がなびき、
田舎者のわめき声が太鼓の音をかき消す
「俺たちが養うべきは飛び切り皮肉屋の売奴だ
理屈屋どもの革命などくたばれ
「気の利いたテンペラ画のような国万歳!
産業と軍隊のために奉仕せよ
「ここがどこだろうともういい、おさらばだ
徴兵に志願して、残忍な哲学を身につけよう
科学を軽蔑し、快楽に悪知恵を働かせ
世の中がどうなろうと知ったことか。
これが本物の行進だ いざ前へ進め」
ギヨーム・アポリネール Guillaume Apollinaire (1880-1918) は、20世紀初頭のフランスにおける、ほとんどあらゆる前衛芸術に係わりを持った。今日では詩人としての名声が確立しているが、彼はむしろ美術批評家として出発したのであり、ピカソやブラックのキュビズム、キリコらのフュチュリズム、そしてオルフィズムやシュルレアリズムなどを次々と世に紹介したことで知られた。
アポリネール詩集「アルコール」から「ミラボー橋」を読む。(壺齋散人訳)
ミラボー橋の下をセーヌが流れる
我らの愛も
忘れないでおこう
苦悩の後には喜びがあることを
日は暮れよ 鐘よ鳴れ
時は流れ ぼくはとどまる
アポリネールの詩「イヌサフラン」 Les colchiques (壺齋散人訳)
秋の牧場はきれいだけれど毒がある
牡牛がそこで草を食むと
そのうちに毒にあたる
目の隈模様のリラのようなイヌサフランが咲いた
お前の目もこの花のようなすみれ色
青みがかった目の隈のような秋のような色だ
その目のためにわたしの命も毒にあたる
クロティルド Clotilde :ギヨーム・アポリネール(壺齋散人訳)
アネモネとオダマキが
庭の中で花を開いた
メランコリーが愛と
さげすみの合間に眠る庭
白雪 La Blanche Neige :アポリネール詩集「アルコール」から(壺齋散人訳)
空には大勢の天使たち
一人は士官の服を着て
一人はコックの姿をし
他のみんなは歌っている
ジプシー女 La tzigane (アポリネール:壺齋散人訳)
あの女ジプシーは知っていたんだ
俺たちが闇で引き裂かれていると
それで俺たちは別れたが
何と井戸から希望がわいて出てきた
秋 Automne (アポリネール:壺齋散人訳)
霧の中を蟹股の農夫と雄牛が行く
秋の霧の中をのんびりと行く
霞んで見えるのは貧しくもつつましい村
歩きながら農夫は鼻歌を歌う
愛の歌と浮気の歌
愛の指輪と傷ついた心の歌
秋が夏を過去へと追いやった
霧の中を灰色の二つの影が行く
鐘 Les cloches (アポリネール:壺齋散人訳)
美しいジプシー 我が恋人
鳴り渡る鐘を聞いてごらん
二人で激しく愛し合おう
周りの人など気にしないで
サンテ刑務所 A la Santé (アポリネール:壺齋散人訳)
I
独房に入る前に
俺は裸にされた
くぐもったうめき声がいう
ギヨーム なんてざまだ
ラザロが出てきた墓へ
俺は入っていくのだ
さらば 陽気な騒ぎ声よ
昔の日々よ 娘たちよ
病める秋 Automne malade (アポリネール:壺齋散人訳)
病める秋よ 惜しまれつつ
お前は死すだろう バラ園に嵐が吹きすさぶ頃
果樹園に
雪が降る頃
ギヨーム・アポリネールの詩「狩の角笛」 Cors de chasse(壺齋散人訳)
俺たちの恋愛は気高くも悲劇的
暴君の仮面をみるようだ
どんな不思議なドラマも
どんな些細なことがらも
俺たちの愛を掻き立てたことはなかった
アポリネール詩集「カリグラム」から「雨が降る」 Il pleut (壺齋散人訳)
女たちの声が雨のように降っている
思い出の中にさえも
死んでしまっているかのように
ギヨーム・アポリネールの詩「はがき」 Carte postale(壺齋散人訳)
テントの中で君にはがきをしたためている
外では夏の日が暮れゆき
青みがかった空には
まばゆいばかりの花模様がみえる
それは耳を劈く砲弾が
束の間に描く模様なのだ
アポリネールの詩「鳥は歌う」 Un oiseau chante(壺齋散人訳)
どこかで鳥の歌声がする
お前の心が目覚めていて
兵士たちの間を漂っているのか
僕の耳に心地よく響く
ギヨーム・アポリネールの詩「星の悲しみ」 Tristesse d'une étoile(壺齋散人訳)
美しいミネルヴァが僕の頭から生まれた
血が星となって永遠に僕の頭を飾るのだ
戦いの女神が僕の頭を武装してくれる
分別は底のほうに 空はてっぺんにある
トリスタン・コルビエール Tristan Corbiere (1845-1875) は全く無名のまま死んだ。彼が生前に出した唯一の詩集「黄色い愛」 Les Amours Jaunes は誰からも注目されることがなかった。そんなトリスタン・コルビエールの詩を始めて世に紹介したのはポール・ヴェルレーヌである。