毎週金曜日の夕方に総理大臣官邸周辺で脱原発デモを繰り広げてきた人々の代表と、野田首相が会談の場を設けたそうだ。テレビや新聞の報道によれば、野田さんには菅元首相が付き添い、脱原発デモ側からは10名ばかりが参加して、ほぼ30分にわたり会談を行ったが、互いに主張を言い合うだけに終わり、会談とは程遠い事態に終わったそうだ。
しかしひとつだけ、オヤと思わせる場面があった。野田首相が、将来における脱原発の可能性について言及したことだ。野田さんはただ、その可能性を研究すると言っただけなのかもしれないが(あるいは、野田さんのいうところだから、どこまで信用していいのかわからぬが)、首相のいうことだけに重みはある。是非その方向での研究を進めてもらいたいものだ。
先日は、例年以上に暑かった今年の夏が、今までのところ深刻な電力不足なしで乗り切れているとの情報が新聞等で伝えられた。ピーク時においても、電力会社全体としては供給能力に余裕があったそうだ。このことから、今年は大飯原発の稼働がない状態であっても、すなわち原発ゼロの状態でも、電力が賄えたということになりそうだという。
勿論、市民の節電はじめ、国を挙げての努力が効を奏したのだろう。そうした国民の強い意志と努力がなければ、いつ何時深刻な電力不足に陥らないともかぎらない。
しかし、今年が原発ゼロでも破綻しなかったということになれば、脱原発という選択も、一部でいわれているほど、荒唐無稽な選択ではないということになる。代替エネルギーについて開発の努力をしながら、すこしずつ脱原発を進めて行けば、重大な混乱なく進む可能性が強くなったわけである。
この会談と前後して、日本商工会議所の代表が野田首相を訪ね、先に政府が示した原発依存度案について、20-25パーセントを含めて、その実現性に全面的な疑問を投げかけ、引き続き原発を推進するように訴えたそうだ。その主張の根拠はといえば、経済への悪い影響と言うのみで、国民の安全を全く考慮していないばかりか、脱原発がもたらす経済へのプラスの影響についても、何ら考慮するところがなかった。
まったく想像力に欠けた、思考停止状態とも言うべき、惰性的な態度である。こんな連中のいうことを、いちいち真に受けてはおれんとの、気持ちを強くしたところだった。(写真は会談の様子:NHKから)