英詩のリズム


エズラ・パウンドの詩「メダリオン(MEDALLION)」(壺齋散人訳)

  磁器に描かれたルイーニ
  グランドピアノが
  澄んだソプラノで
  罰当たりな声を上げる

エズラ・パウンドの連作詩「ヒュー・セルウィン・モーブリー(Hugh Selwyn Mauberley)」から「反歌(ENVOI)」(壺齋散人訳)

  ものいわぬ沈黙の書物よ
  かつてローズの歌を歌ってくれた女に伝えよ

エズラ・パウンドの連作詩「モーバリー(Hugh Selwyn Mauberley)から第十二の詩「ダフネが木の皮に太股を突っ込んだまま(DAPHNE with her thighs in bark)」(壺齋散人訳)

  ダフネが木の皮に太股を突っ込んだまま
  俺に向かって草っぱみたいな手を指し伸べた気がする
  だが現実の俺はビロードの応接間で
  ヴァレンタイン夫人の指示を待っていたんだ

エズラ・パウンドの連作詩「ヒュー・セルウィン・モーブリー(Hugh Selwyn Mauberley)」から第十一の詩「ミレジア精神を受け継ぐ女」(CONSERVATRIX of Milesien)(壺齋散人訳)

  ミレジア精神を受け継ぐ女だって
  それは多分 フィーリングのようなものだろうけど
  それにしてはイーリングで
  こちこちの英国紳士と暮らしてるのはどういうことだ

エズラ・パウンドの連作詩「モーバリー(Hugh Selwyn Mauberley)」から第10の詩「そのたわんだ屋根の下で(BENEATH the sagging roof)」(壺齋散人訳)

  そのたわんだ屋根の下で
  スタイリストは暮らしていた
  金もなく 名誉もないが
  世のわずらわしさとは無縁でいられる

エズラ・パウンドの連作詩「モーバリー(Hugh Selwyn Mauberley)」から第九の詩「ニクソン氏」MR. NIXON(壺齋散人訳)

  自己所有の蒸気船のキャビンの中で
  ニクソン氏は俺に忠告してくれたよ
  なるべく早く出世するんだ
  批評家には気をつけろよって

エズラ・パウンドの連作詩「モーバリー(Hugh Selwyn Mauberley)」から第八の詩「ブレンボーム」BRENNBAUM(壺齋散人訳)

  空のように澄んだ瞳
  まん丸な子どもの顔
  喧嘩して逮捕される不器用さ
  これらのどれにも優雅さが欠けている

エズラ・パウンドの連作詩「ヒュー・セルウィン・モーバリー(Hugh Selwyn Mauberley)」から第七の詩「シエナが私をつくり」SIENA MI FE', DISFECEMI MAREMMA(壺齋散人訳)

  胎児の漬け物や骨の瓶詰めに囲まれて
  カタログを作成している間に
  俺が出会ったのはムシュー・ヴェローグ
  ストラスブールの貴族の末裔だ

エズラ・パウンドの連作詩「ヒュー・セルウィン・モーバリー(Hugh Selwyn Mauberley)」から第六の詩「青い瞳」YEUX GLAUQUES(壺齋散人訳)

  ジョン・ラスキが「王の宝庫」を出版した頃
  グラッドストーンはまだ尊敬され
  スウィンバーンとロゼッティは
  あいかわらず罵しられていた

エズラ・パウンドの詩集「ヒュー・セルウィン・モーバリー(Hugh Selwyn Mauberley)」の第五の詩(壺齋散人訳)

  無数の若者が死んだ
  才能ある若者も死んだ
  歯抜けの老いぼれのために
  つぎはぎだらけの文明のために

エズラ・パウンドの詩集「ヒュー・セルウィン・モーバリー(Hugh Selwyn Mauberley)」の第四の詩(壺齋散人訳)

  いづれにしたってこいつらは戦ったんだ
  あるものは祖国のためだと信じて
  あるものはすばやく武器をとり
  あるものは冒険心から
  あるものは弱さを恐れて
  あるものは非難されるのを恐れて
  あるものは想像のうちで殺戮を愛し
  後になって思い知った
  そしてあるものは殺戮を愛したことを恐れた

エズラ・パウンドの詩集「ヒュー・セルウィン・モーバリー(Hugh Selwyn Mauberley)」の第三の詩(壺齋散人訳)

  コスのモスリンの代わりに
  紅茶色のティーガウン
  サフォオの竪琴の代わりに
  自動ピアノ

エズラ・パウンドの詩集「ヒュー・セルウィン・モーバリー(Hugh Selwyn Mauberley)」の第二の詩(壺齋散人訳)

  時代が求めたのは
  あわただしいしかめ面のイメージ
  現代という時代に相応しい何かであって
  断じて アッテイカの優雅ではない

エズラ・パウンドの詩集「ヒュー・セルウィン・モーバリー(Hugh Selwyn Mauberley)」から「自らの墓のためのオード(Ode pour l'election de son sepulchre)」(壺齋散人訳)

  三年もの間 時代と折り合いがあわず
  あいつは死んだ芸術を蘇らせようとした
  それは旧い意味合いでの荘重な詩だったが
  どうもスタートから間違っていたようだ

エズラ・パウンドの詩集「ペルソナ」から「湖の小島」The Lake Isle(壺齋散人訳)

  神よ ヴィーナスよ 泥棒の守護神ヘルメスよ
  適当な折に 一軒の小さなタバコショップが欲しい
  棚の上にタバコケースを積み重ね
  ばら売りのキャヴェンディッシュや
  刻みタバコ
  それにバージニアの葉巻を
  ガラスケースに陳列しよう
  それと あまり汚くない
  天秤を一台用意しよう
  通りがかりの娼婦たちがちらっと立ち寄って
  他愛ない冗談をいったり お化粧を直したりできるように

エズラ・パウンドの詩集「ペルソナ」から「出会い」The Encounter(壺齋散人訳)

  あいつらが新しい道徳について語り合っている間中
  彼女の目は俺を探してたっけ
  そして俺が立ちあがろうとしたら
  日本製の紙タオルのような肌触りで
  彼女の指が俺をなでてくれたんだ

エズラ・パウンドの詩「地下鉄の駅で」In a Station of the Metro(壺齋散人訳)

  群集のなかのこれらの顔の表情は
  雨に濡れた枝に芽吹いた蕾のようだ

エズラ・パウンドの詩集「戦いの始まり」The Coming Of War(壺齋散人訳)

  レテのイメージ
  金色の
  淡い光が満ちた
  野原
  灰色の断崖
  その下には

エズラ・パウンドの詩集「ペルソナ」から「バスタブ The Bath-Tub」(壺齋散人訳)

  白い磁器で縁取られたバスタブ
  そこからお湯がこぼれてやがて冷める
  俺たちの勢いある情熱もやはりそのように冷める
  いくらほめても納得しない我が恋人よ

エズラ・パウンドの詩集「ペルソナ」から「墓碑銘」Epitaphs(壺齋散人訳)

フー・イー

  フー・イーは雲と山河を愛した
  それでも酔っ払って死んだ

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