子どもの甲状腺から放射能検出、をどう受け取るべきか

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福島原発事故による子供の放射線被ばくの実態が3月下旬に行われたが、その調査結果と被曝の子どもに対する影響の見込みが、日本小児科学会の場で発表された。

いわき市や飯館村などで、1149人の子どもを対象に甲状腺への被ばく状態を調べたところ、ほぼ半数の子どもの甲状腺が被曝していた。被曝量は年間に換算して35ミリシーベルトが上限だという。小児科学会では、この調査を踏まえて、「健康に影響がでる値ではない」ととりあえずコメントしたということだ。

NHKの報道を通じてこの問題に接した筆者は、いくつかの点で納得できないものを感じた。

まず35ミリシーベルトという数字をどうとらえるかという点だ。

そもそも日本では、一般の人が浴びてもよい放射線の年間限度量を1ミリシーベルトとしていた。ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告に基づいて定めた値だ。ところが先般、子どもの甲状腺への放射線被ばく限度を年間20ミリシーベルトに引き上げようとした動きがあった際に、大いに批判的な意見が出たことは記憶に新しいことだ。大人ならともかく、成長段階にある子供に対してこのような基準を当てはめることはあまりにも無謀だという批判も出た。ところが今回は、20ミリシーベルトを超えても、「健康に影響がでる値ではない」という。

いったいどうなっているのだろう。何を基準にしてものごとを考えたらいいのか、子どもを持つ親たちは、これでは不安にならざるを得ない。

小児科学会では、「健康に影響がでる値ではない」といいつつ、「微量なので将来、甲状腺がんが増えるとは考えにくいが、万が一の場合にも対応できるよう継続的な健康管理が必要だ」ともいっている。もしかしたら、あなたのお子さんがガンにならないともいえない、そういう意味のコメントだろう。これでは親たちの不安は高まるばかりというべきだ。

疑問の二つ目は、この調査結果に国がどのようなかかわりを持っているのかということだ。小児科学会という第三者機関がこの問題でコメントすること自体は、それはそれで無意味なことではない。だがそのことと、国がこの問題をどう受け止めているかということは、別問題だ。

国は国で、国民に対して、被爆の実態を綿密に報告するとともに、それがもたらす影響についてきちんとコメントすべきだ。

この他にも、いくつか納得できない点がある。最も大きな不満は、被曝実態に関する国民への説明が、アンクリアで行き当たりばったりな点だ。

日本政府は国民に対してもっと謙虚になるべきだ。現代に生きる日本人は、政府のいうことを鵜呑みにして疑問を感じないほどの愚民ではないのだから。





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たまたまこのページを発見した狗神です。
おそらく、ソースは、
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110813/k10014892751000.html
これなんでしょう。
単刀直入に描くと、35ミリシーベルトのとらえ方が間違ってる。
おそらく、この35ミリシーベルトは、生涯積算被曝線量のことを言っているものと解釈できる。
文章中に、年間あたりとも、時間当たりとも一切書かれていない。
ということは、年間1ミリの人工放射線被ばく限度との比較も、年間1,4ミリの自然放射線平均被曝線量との比較も、年間20ミリとの被曝線量との比較も、大した意味はなさない。

それこそ、水素爆発直後に、さんざん福島の地方局が流しまくった「胸のレントゲン検査が1回50マイクロシーベルトであり、最も放射線量の高い毎時20マイクロシーベルトの飯舘村であっても、レントゲンの線量を十分に下回っている。」のテロップ並みに意味がない比較である。
(ただし、この比較は、次のように解釈すべき。すなわち、胸のレントゲン検査と同じレベルの放射線を浴びるためには、毎時20マイクロシーベルトのところに素っ裸で2時間30分たちっぱなしでいる必要があり、それはすなわち、放射線で死ぬ前に風邪で死ぬよってこと。放射線によるリスクより風邪によるリスクのほうが高いから心配すんな。)

生涯層被曝線量の35ミリシーベルトと、年間あたりの被ばくとを比較するためには、放射性ヨウ素131の崩壊ペースを考えたうえで、たとえば、当初放射性ヨウ素131が2048個取り込まれたと仮定すると、最初の半減期を迎える8日間で、1024個の放射性ヨウ素が放射性ヨウ素であり続けることに耐え切れずに放射線をだして放射性ヨウ素じゃない別のものに変化し(残りの1024個は放射性ヨウ素であり続けることに耐えているので放射線は出さない)、次の8日間で最初の8日間を耐えた1024個のうち512個の放射性ヨウ素が別なものになろうと放射線を出して変化し……、次の8日間で256個、次の8日間で128個……
って考えたうえで、1個の放射性ヨウ素131から何マイクロシーベルト被曝するのか考えて、最初の8日間でどれだけ被爆し、次の8日間で……、ってやっていって、初めて年間ベースの被ばく線量を推計でき、その数字と、上記の年間なんぼって数字と比較できる。
この計算すっ飛ばして、年間1ミリと比較するのは非常に乱暴。

ちなみに、水素爆発から160日たったと仮定すると、今現在甲状腺に入ったであろう放射性ヨウ素は、当初の水素爆発の時に吸い込んで以来あとは放射性ヨウ素を取り込んでいないと仮定すると、当初の数から、2分の1を20回かけた数になっているので、……、今残ってる放射性ヨウ素はとっても少ないよ。
いまさら今後の放射線をワーワー騒ぐより、被曝しっちまったんだから、被曝したことを前提に、被曝から人体が回復できるように、健康でストレスのない生活を送るほうが大事だと思うんだけど、どうなんだろうね……

おっと、超長文、失礼しました。

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このページは、が2011年8月13日 20:47に書いたブログ記事です。

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