ニアル・ファーガソン(Niall Ferguson)のオバマ批判

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保守派の論客として知られるニアル・ファーガソン(Niall Ferguson)が、雑誌Newsweek の最近号に、オバマ大統領を強く批判する記事を寄せた。題名は Hit the Road, Barack (立ち去れ、オバマ)というショッキングなものだ。するとすかさず、クルーグマンが反論の文章をニューヨーク・タイムズのコラムに寄せた。ファーガソンのオバマ批判はお門違いだというのだ。

ファーガソンのオバマ批判の要点はふたつ。ひとつはオバマが嘘をついたということ、もう一つはオバマが財政危機を深刻化させたということだ。

まず、どんな嘘をついたというのか。オバマは大統領選挙での公約に、雇用を作り、経済を活性化させ、社会資本を充実させるといっていた。しかしそのどれも実現されていない。ということは、オバマが公約を守らなかったということであり、結果的には国民に嘘をついたということになる、そういう理屈のようだ。

オバマが財政危機を深刻化させたという点については、政府財政の赤字の現状を含めて数字による検証はない。ただこのままでは、2037年における政府債務の残高がGDPの200パーセントにのぼるだろうと予想しているだけである。

赤字を膨らます要因としてファーガソンが批判しているのは、いわゆるオバマケアだ。オバマケアの導入によって、現在GDPの5パーセントを占めている医療費の国庫負担が2037年には10パーセントに達するというのである。また社会保障全体にわたる国庫負担は、現在のGDP比16パーセントが2037年には25パーセントに達するだろうと予想している。

許せないのは、それによって生じる負担を、オバマが金持ちへの増税で賄おうとしていることだ。オバマは国民の50パーセントから取り上げた税金で、残りの50パーセントを養おうとしている。その50パーセントは、生きる能力にも気力にも劣った連中だ。そんな連中のために豊かな50パーセントが犠牲になることはない。どうもそういう理屈らしい。

ファーガソンのこの文章が掲載されているNewsweek を読んだとき、クルーグマン夫妻はどこかの山の中で保養中であったらしいが、早速休暇を切り詰めて、反論の文章を書いた。

クルーグマンは、ファーガソンの文章のうち、次の部分に着目した。
"The president pledged that health-care reform would not add a cent to the deficit. But the CBO and the Joint Committee on Taxation now estimate that the insurance-coverage provisions of the ACA will have a net cost of close to $1.2 trillion over the 2012-22 period."

オバマケアが財政赤字の要因になることを、議会の予算委員会でも認めたという趣旨だが、実際にはそんなことはなかった、オバマケアには、赤字を増大させる効果はないと、予算委員会でも認めざるを得なかった。というのがクルーグマンの反論の趣旨だ。つまりファーガソンは間違った情報をもとに、世論操作をしようとしている、その態度が許せないとせまったのだった。

これに対してファーガソンのほうは、早速ウェッブ版上で弁明を行ったが、いまのところ、どうも旗色が悪いようである。(写真はファーガソン:New Yorkerから)





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このページは、が2012年8月24日 20:55に書いたブログ記事です。

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