先日失脚した元重慶市トップ薄熙来の妻で、イギリス人殺害の容疑で裁かれていた谷開来に、2年間の執行猶予つきで死刑判決が言い渡された。
このニュースを聞いて筆者は、死刑判決に執行猶予がつくことの意味を改めて考えさせられた。というのも、日本は無論、死刑制度を採用しているほとんどの先進国では、死刑判決に執行猶予がつくなどといったことは、考えられないからだ。
日本に例を取って見れば、死刑は犯罪への処罰としては極刑であり、よほど重大な犯罪に関して、情状酌量の余地がなほど悪質な行為について、社会復帰も期待できないような、どうしようもない人格に対してなされる、最後の判決である。それ故、執行猶予などは考慮の外と言うことになる。執行猶予は、正常な社会復帰の可能性を考慮に入れた制度であり、したがってそもそも執行猶予が論じられるようなケースに、死刑を適用するなどということは考えられないのだ。
中国においては、執行猶予が付された場合、その期間罪を犯さずに過ごしたものには、刑が減じられることになっている。谷開来の場合でいえば、2年間無事監獄で過ごした暁には、死刑執行が免除され、事実上無期懲役と同じ扱いになるらしい。
日本の場合には、執行猶予の期間中は刑の執行を免れ(つまり収監されることがない)、期間が満了した場合には刑そのものから解放される。無罪になるわけではないが、処罰されることはなくなるわけである。
中国が、死刑制度に執行猶予を抱き合わせにしていることの背景には、死刑が殺人のような凶悪犯以外に、経済犯を含む広範囲な事犯について適用されているからだと考えられる。だがそうした観点からしても、今回のケースに執行猶予が適用されたのは、非常に意外なことに受け取れる。(写真は法廷での谷開来:ロイターから)