「中国大学入試、繁体字など非規範文字の使用厳禁」という見出しの記事が人民網の日本語版にあったので、興味を覚えて読んだところ、驚いたというか、中国人のおおらかさを感じとって、微笑を禁じ得なかった次第だ。
記事は、「中国で来月6日から行われる今年の全国大学入試試験では、繁体字、甲骨文字、火星文(記号を多用した言葉)、ネット用語など、現行規範に合致しない中国語文字の使用が例外なく禁じられる」と伝えている。
というのは、こうした文字で答案を書く生徒がいることを物語っているのだろう。実際にその通りで、中国では入試試験に際して、標準の簡体字ではなく、繁体字を使って書くほかに、甲骨文字を使って書く生徒も毎年少なからずいるというのだ。
こんなことが絶えないのは、そうした文字で答案を書くことが必ずしも不利にならなかった事情が働いているから、ということのようだ。もしも、標準文字以外の答案が、無条件で棄却されるとわかっていたら、そんな文字を使うのは自殺行為に等しい。
ところが、中国の入試現場では、繁体字や甲骨文字で答案を書くと、不利になるどころか、かえって試験官に良い印象を与えるようなのだ。いまどき、普通の生徒には操れない繁体字を書くこと自体、その生徒の教養の深さを物語っているというわけだろうか。
ところで、日本の事情はどうだろう。こちらは入試試験で旧字体の漢字を使ったり、歴史的仮名遣いを用いたりする生徒は、まったくといってよいほどに、いないのではないか。仮にいたとしたら、入試現場の採点員は、それを許容するだろうか。興味深いところだ。(写真は中国古代文字を使って書かれた作文答案:人民網から)
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