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夜の歌〔ブレイク詩集:無垢の歌〕


ウィリアム・ブレイクの詩集「無垢の歌」 Songs of Innocence から「夜の歌」 Night(壺齋散人訳)


夜の歌

  日が西に沈むと
  宵の明星が輝きだし
  鳥たちが巣にうずくまる
  私もねぐらを求めよう
  月が花のように
  天の一角にさしかかり
  静かな喜びに満ちて
  夜に微笑みかけている

  おやすみ 草原や木陰のものたちよ
  羊の群がざわめいていたところ
  子羊が草を食んでいたところには
  天使たちが隊列をなし
  見えない姿で歩きながら
  みんなを祝福して回る
  一つ一つのつぼみや花びら
  眠れるものたちのふところを

  寝静まった巣を覗き込むと
  そこには鳥たちがうずくまる
  天使は洞窟の獣たちにも
  無事であるように気を配る
  物音が聞こえてくるのは
  寝息の音に違いない
  天使はさらに眠りを吹き込み
  獣たちのそばに腰掛ける

  狼やトラたちがほえると
  天使は哀れみながら立ち上がり
  獣たちの渇きをいやしてあげる
  羊たちを襲わないように
  それでも獣たちが突進すると
  注意深く立ちはだかり
  その心に訴えかける
  仲良く穏やかに生きようと

  ライオンはその輝く目から
  黄金の涙を流し
  か弱きものの叫びを聞くと
  羊の群の周りを歩み
  天使に感謝の言葉をささげた
  “天使たちの導きによって
  猛々しき心は去った
  我らは不滅の日を生きていこう

  “汝ら 哀れな子羊たちよ
  汝らとともに横たわって寝よう
  かの天使たちを思い描きながら
  汝らとともに草を食もう
  命の水で清められた私は
  黄金のタテガミもふさふさと
  永遠に輝き続けるだろう
  汝らのための守護者として“

ブレイクの詩集「無垢の歌」は笛吹きと小さな子どもの会話で始まり、「夜の歌」で終わる。始まりの歌が明るい光に満ちていたのに対して、終わりの歌は夜の静けさの中で穏やかに歌われるのである。

この詩には、ブレイクの調和ある世界の観念がよく現れている。羊や鳥たちはそれぞれの巣で平和に眠り、狼やトラ、そしてライオンたちは天使によって渇きをいやされ、弱いものを襲うことはない。肉食獣が羊とともに草を食むというのは、現実にはありえないことだが、ブレイクはそれを精神性によって乗り越えようとしている。

ライオンはブレイクの最も愛した生き物だったようだ。ライオンは黄金のタテガミをなびかせ、強さとともにやさしさを感じさせる。ブレイクはその姿に高貴な精神性を見出したのだろうか。


Night William Blake

  The sun descending in the west,
  The evening star does shine;
  The birds are silent in their nest.
  And I must seek for mine.
  The moon like a flower.
  In heaven's high bower,
  With silent delight
  Sits and smiles on the night.

  Farewell, green fields and happy groves,
  Where flocks have took delight;
  Where lambs have nibbled, silent moves
  The feet of angels bright;
  Unseen they pour blessing.
  And joy without ceasing,
  On each bud and blossom,
  And each sleeping bosom.

  They look in every thoughtless nest,
  Where birds are cover'd warm;
  They visit caves of every beast,
  To keep them all from harm;
  If they see any weeping
  That should have been sleeping
  They pour sleep on their head
  And sit down by their bed.

  When wolves and tygers howl for prey,
  They pitying stand and weep;
  Seeking to drive their thirst away.
  And keep them from the sheep.
  But if they rush dreadful,
  The angels, most heedful,
  Receive each mild spirit,
  New worlds to inherit.

  And there the lion's ruddy eyes
  Shall flow with tears of gold.
  And pitying the tender cries,
  And walking round the fold,
  Saying "Wrath, by his meekness,
  And, by his health, sickness
  Is driven away
  From our immortal day.

  "And now beside thee, bleating lamb,
  I can lie down and sleep;
  Or think on him who bore thy name,
  Graze after thee and weep.
  For, wash'd in life's river,
  My bright mane for ever
  Shall shine like the gold
  As I guard o'er the fold."


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