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見つかった女の子〔ブレイク詩集:無垢の歌〕


ウィリアム・ブレイクの詩集「無垢の歌」 Songs of Innocence から「見つかった女の子」の歌 The Little Girl Found (壺齋散人)


見つかった女の子

  夜通し苦痛にさいなまれ
  リカの父さんと母さんがゆく
  深い谷を越えて
  すすり泣く砂漠を横切り

  疲れ果てて打ちのめされ
  号泣のあまり声も枯れた
  腕を組んで7日の間
  砂漠の中をとぼとぼ歩く

  深い物陰に包まれながら
  7日の間夜を過ごした
  砂漠の中で飢えている
  子どものことを夢に見ながら

  青ざめた子どもは道なき道を
  さまよう姿であらわれる
  飢えのために弱り果てて
  泣き叫ぶ声もうつろに響く

  不安のあまりに立ち上がると
  母さんは震えがとまらない
  悲痛が彼女をとりこにして
  もう一歩も歩めないのだ

  父さんは母さんを腕に抱え
  ともに辛い悲しみにふける
  すると二人の行く手には
  一頭のライオンが横たわっていた

  背中を向けて逃げようとしたが
  ライオンは重いタテガミをふるって
  二人を地面に押し倒し
  二人の周りを歩き回った

  ライオンは二人の匂いを嗅いだ
  けれど恐ろしい気はしなかった
  ライオンは二人の手をなめると
  静かに立っていたからだった

  二人がライオンの目をみると
  そこには驚きの色が見えた
  不思議に思い見続けると
  黄金の鎧をまとう霊が見えた

  ライオンは頭に王冠を戴き
  肩から先には黄金の
  ふさふさとした毛がなびいている
  二人はすっかり恐れを忘れた

  二人に向かってライオンはいった
  “もう嘆く必要はない
  わたしの宮殿まで 一緒に来なさい
  リカはそこで寝ているから“

  二人はライオンの後に続いた
  ライオンの像が導くままに
  その先に二人は見た 眠れる子どもを
  野生のトラたちに囲まれながら

  リカたちはこのときの来るのを待って
  深い谷間に息づいてきたのだ
  狼たちの遠吠えも恐れず
  ライオンたちのうなり声も恐れず

この詩は「迷子になった女の子」の姉妹編とも言うべき作品である。先の詩が迷子になった女の子の不安を描いていたのに対して、この詩は、子どもを求めてさまよう両親の嘆きと、ライオンに導かれて子どもと再会する喜びを描いている。

二編合わせて、一つの物語を形作っており、二つの詩の内容をライオンの高貴な像が結び付けている。ここに描かれているライオンは、ナルニア国物語に登場する「アスラン」を思わせる。


The Little Girl Found William Blake

  All the night in woe
  Lyca's parents go
  Over vallies deep.
  While the desarts weep.

  Tired and woe-begone.
  Hoarse with making moan,
  Arm in arm seven days
  They trac'd the desart ways.

  Seven nights they sleep
  Among shadows deep.
  And dream they see their child
  Starv'd in desart wild.

  Pale, thro' pathless ways
  The fancied image strays
  Famish'd, weeping, weak,
  With hollow piteous shriek.

  Rising from unrest,
  The trembling woman prest
  With feel of weary woe:
  She could no further go.

  In his arms he bore
  Her, arm'd with sorrow sore;
  Till before their way
  A couching lion lay.

  Turning back was vain:
  Soon his heavy mane
  Bore them to the ground.
  Then he stalk'd around.

  Smelling to his prey;
  But their fears allay
  When he licks their hands,
  And silent by them stands.

  Tbey look upon his eyes
  Fill'd with deep surprise;
  And wondering behold
  A Spirit arm'd in gold.

  On his head a crown;
  On his shoulders down
  Flow'd his golden hair.
  Gone was all their care.

  "Follow me." he said;
  "Weep not for the maid;
  In my palace deep
  Lyca lies asleep."

  Then they followed
  Where the vision led,
  And saw their sleeping child
  Among tygers wild.

  To this day they dwell
  In a lonely dell;
  Nor fear the wolvish howl
  Nor the lions' growl.


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