渡り鳥は季節ごとに長い距離を飛行して、子育てや餌の確保に努めているものだが、中でもシギの類は長距離を休みなく一気に飛ぶことで知られている。
これまで観察された中で最も長い距離を休みなく飛んだのはダイシャクシギ Curlew だ。オーストラリア東部から中国まで6400キロもの距離を、ほとんど休むことなく飛び続けたことが確認されている。2006年から2007年にかけて衛生画像がとらえたところによると、ダイシャクシギたちは、南太平洋の上空を飛び続け、4日から9日かけて目的地に到達した。この間ほとんど飲まず食わずの状態だったらしい。
ところが今年、アラスカからニュージーランドまで11500キロの旅をほとんどノンストップで飛び続けたシギが確認された。オオソリハシシギ Bar-Tailed Godwit である。
アメリカの生物学者ロバート・ギル教授らの研究グループが、23羽のオオソリハシシギにセンサーをつけて、その行動を追ったところ、もっとも早く目的地に到達したのはメスの個体で、かかった日数は8日だった。メスはオスに比較して体が大きく、体内の脂肪も豊かなことから、オスよりもタフらしい。
オオソリハシシギは何故このような行動をとるのか。研究グループは、最短の移動距離が両地点を直線で結ぶ海上のルートであること、しかも海上は天敵に襲われる危険が少ないこと、これらがシギたちに海上を飛行させることを選ばせているのだろうと推測している。
もし陸地沿いに異動するとすれば、そこには天敵に捕食される危険が満ちているし、病気になったり寄生虫に取り付かれたりする危険も付きまとう。この点でも海上のルートはシギたちにとって安全なのだ。
それにしてもこんなに長い距離を殆ど飲まず食わずで飛び続けることが、どうして可能なのだろう。研究グループの観察結果によれば、シギたちは出発に先立って栄養分を体内にたっぷり蓄える。その殆どは脂肪だ。シギはこの体内栄養を唯一のエネルギー源にして過酷な飛行を続ける。
出発時点において、メスは自分の体重の半分に相当する脂肪を蓄えていたが、目的地に到着したときには脂肪は完全に燃え尽きていた。またオスは飛行中に、付着されたセンサーが抜け落ちてしまったが、それは脂肪の燃焼で体が小さくなった結果だった。
教授たちの研究によれば、飛行中におけるシギたちの運動量は、通常の8倍ないし10倍に達する。人間の場合にはツール・ド・フランスのサイクリストが記録した6倍というのが最大記録だというから、シギたちがこの飛行に如何に大きなエネルギーをかけているかがわかる。
オオソリハシシギたちが目指したニュージーランドの水辺には天敵が殆どいない。シギたちは長い飛行のご褒美として与えられたこの安全な水辺て、一冬を過ごすことになる。
(参考)Birds Fly More Than 7000 Miles Nonstop By David Brown
関連リンク: 日々雑感
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