北朝鮮には現在、154000人の政治犯が国内6箇所の収容所に入れられていると、韓国の与党ハンナラ党の議員ヨン・サンヒュン氏が明らかにした。2400万人の人口にしてこの数は、日本の規模に引き換えれば75万人にも相当する。独裁国家に強制収容所はつき物だが、現在の北朝鮮はスターリン体制化のソ連に匹敵するほどの政治犯を抱えているようだ。
ヨン・サンヒュン氏は根拠となるデータを政府から入手したという。韓国政府はこれまで、南北融和を考慮して北朝鮮を刺激するようなことを避けてきたが、ハンナラ党政府になって北朝鮮へ厳しく望むようになってから、こうしたデータも隠さなくなったということらしい。
というのも、北朝鮮は今年憲法改正を行って人権尊重を前面に押し出し、人権問題に関する国際社会の批判をかわそうとした経緯がある。韓国政府はそれが本当に実施されてきたのか、強い関心を払っているのだろう。
実際1990年代の初頭には、北朝鮮の政治犯は20万人を超え、彼らを収容するための施設が10箇所もあった。90年代の中ごろ以降、世界の批判が高まるのを考慮して、収容所の数を減らしてきたが、いまだ6箇所の収容所に154000人もの政治犯が入れられているわけだ。
政治犯の主なものは、反体制的言動で拘束されたものだ。そのほか脱北者や権力闘争の敗退者、キム・ジョンイルを侮辱したなどというものも含まれている。彼らは1日10時間の強制労働に駆り立てられる一方、貧しい食事しか与えられず、また医療も十分でないという。収容所からの脱走を試みたものは、公開処刑されたり、女性の場合はレイプされたりするそうだ。
これらの政治犯は公式な裁判を受けず、薄弱な根拠に基づいて拘束されるケースが多い、そのかわりといっては何だが、キム・ジョンイルからの直接の命令がない限り処刑されることはない、その反面いつ解放されるか、被収容者には見当もつかず、事実上終身刑を課せられたと同様の事態に追い込まれているらしい。
北朝鮮は現代世界にあって最も人権が蹂躙されている体制だと、長い間国際社会の批判を浴びてきた。先の憲法改正はその批判をかわそうとするひとつのジェスチャーだったと考えられるが、実態は殆ど変わっていないといえよう。
今回の与党議員による暴露は、そうした北朝鮮の現状を厳しく追及する動きにつながるだろう。
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