東電の中途半端な国有化

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東電の一時実質国有化が決まった。福島原発事故の損害倍賞および再建に向けて東電が作成した「総合特別事業計画」を政府が認定し、その中で、政府が一兆円を出資して、50パーセントを超える議決権をもつことが決まったからだ。この計画では、家庭向け電気料金の平均10パーセント以上の値上げ、柏崎刈羽原発の2013年4月からの稼働を、併せて盛り込んでいる。

当然のことというか、これには強い批判の声も上がっている。朝日の社説はその典型的なもので、東電の再建に向けて国民の税金を使うためには、東電をきちんと破綻処理し、株主や貸手の金融機関にも相応の責任を負わせるべきなのに、それを曖昧にして、ずるずると税金を投入するのでは国民の理解が得られない、というものだ。また、家庭向けの電気料金値上げを当然の前提とするのもおかしいし、柏崎刈羽原発に至っては、そのめどさえ立っていない状況で、前提として織り込むのはおかしい、ともいっている。

たしかに、朝日のいうとおり、莫大な国民負担をともなうにしては、中途半端な国有化と言わねばならない。

どうもこの間の、政府と東電とのやり取りをみていると、政府は東電に遠慮しているのではないか、そんな気がして仕方がないのだが、その遠慮が今回の中途半端な国有化につながったのだとしたら、大いに問題だといえよう。

東電は、自分らの再建に政府が関与するのを非常に嫌っていた。できれば、電力料金の値上げなどによって自主再建の見通しを立て、政府の金は極力使わないですましたい、という姿勢が強かった。しかし、電力料金の値上げにしろ、原発再開にしろ、見通しが非常に厳しいことを思い知らされて、実質国有化を仕方なく呑んだ、というふうに感じられる。

そんな東電の態度に、政府が一貫して厳しい態度を取らなかったことの背景には、東電の再建になるべく巻き込まれたくないとする財務省の意向があったと伝えられるし、また、野田総理大臣は、財務大臣時代から東電をかばうような言動が目立っていたともいう。今回の東電に甘い決着にも、野田さんの影がちらついていたとの指摘もあるようだ。

筆者などは、そうした批判はあるとして、折角国有化するのであるから、税金をもっと有効に使う姿勢を見せてもらいたいと思う。

ひとつには、福島原発事故を契機に高まっている脱原発のうねりに対して、一定の方向性を示すということだ。また、発送電分離をはじめとした日本の電力企業のあり方の論議もきちんと行ってもらいたい。

こうした議論を避けて、ずるずると国民の前金をつぎ込むと言った、みっともないやり方だけはやめてもらいたいものだ。





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このページは、が2012年5月10日 19:02に書いたブログ記事です。

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