オリンピックが華やかに繰り広げられているロンドンだが、華やかなのは競技場の中だけで、一歩街中に出ると不況風が吹いているといわれる。期待した観光客の脚は、ロンドン都心や観光スポットには及ばず、ロンドン名物のミュージカル・シアターやパブでは閑古鳥が鳴いているそうだ。ユーロ圏を襲っている不況の風に加えて、イギリスが抱えている構造的な要因も働いているようだ。
ロンドンへのオリンピック招致が決まったのは2005年、当時のイギリスの経済事情は今よりはずっとましだった。そんななかで、ロンドンへオリンピックを招致した背景には、これをきっかけにして東部の活性化を図ろうとする思惑があったという。
ロンドン東部はイーストエンドと呼ばれ、西部に比べて開発が遅れ、住民の所得水準も低かった。そこで、ニューハムにメイン・スタディアムを作ったのをはじめ、様々な関連施設を作り、発展の原動力にしようともくろんだわけだ。
しかし、目論見は外れた。国全体の経済が低迷する中で、イーストエンドも期待したほどの経済効果が表れず、住民の所得が伸び悩む一方、失業者の数は増えている。
深刻な雇用情勢はロンドン東部に限らない。比較的に裕福な西部地区でも、若者たちは仕事にあぶれ、毎日を持て余している。
彼等は何もやることがないから、日中からアルコールのボトルを抱えて街をのし歩いているという。10代後半から20代前半の若い男女が、いたるところの繁華街をのし歩き、ボトルからアルコールを喉に流しこんでは、呂律の回らないしゃべり方で、おだをまく。
これを見かねた政府は、若い連中が簡単にアルコールを手に入れられないよう、酒税をあげてボトルの値段を釣り上げた。たとえば2リットル入りのストロング・サイダーは2ドル97セントから5ドル28セントに、700ミリリットル入りのウォートカが13ドル71セントから16ドル54セントにといった具合だ。
しかし、もともと高めの値段設定をしていたパブでは、酒税のアップ分を価格に転嫁しないところが多いので、若い連中は相変わらず以前通りにパブで飲むことができる。
若い連中は、イギリス国内のみならず、外国にまで押しかけて行って、狼藉を働いているらしい。プラハ、ブダペストといった東欧の都市へは、格安航空券で行けるので、連中は大挙してそれらの都市に繰り出し、だらしなく酔っ払っては、地元の人々の顰蹙を買っているのだという。(写真はNewsweek から)
(参考)The British Are Drinking By Peter Popham Newsweek
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