加速するミツバチの消滅

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ここ数年アメリカやオーストラリアで起きているミツバチの謎の消滅は、果樹や野菜栽培などの農業に深刻な打撃を与えている。その影響は受粉作業を輸入蜂に頼っている日本の農業にも及んでいるというから、他人事ではない。

これから受粉期を迎える今年の春は、ミツバチの不足がかつてないほど深刻化するそうだ。この冬のアメリカは未曾有の天候不良に見舞われ、その影響がミツバチにも及んでいるというのだ。

ミツバチは何故消滅してしまうのか、その原因についてさまざまな研究がなされてきた。考えられるものとしては、寄生虫、ウィルス、バクテリア、栄養状態の変化などがあげられるが、最も有力なものとして最近脚光を浴びてきたのが殺虫剤の成分だ。

市場に出回っている殺虫剤は厳格な検査を経て市場に出されていることもあり、それ自体として有害なものはないといってよいとされてきた。だが農場に振りまかれるさまざまな殺虫剤が相互に作用しあうと、蜂の健康にとって致命的なダメージをもたらす物質が生成されるのではないか。そんな疑念が強まってきたのだ。

実際死んだ蜂の巣を分析すると、そこから蜂にとって致命的な物質が確認された。(上の写真:AP提供)

殺虫剤の成分が植物に取り込まれた後、化学反応によって有害物質が生成され、それが花粉や花蜜の中に取り込まれたものと推測される。汚染された蜜で充満した巣は、働き蜂が生息できる環境ではなくなる。それで蜂たちは巣を逃れて、どこかへ消え去ってしまうのではないか。こんな仮説が有力になっている。

アメリカの当局では、この仮説を徹底的に検証する作業を通じて、ミツバチ消滅のメカニズムを明らかにし、安定的なミツバチ生産体制を整えたいといっている。なにしろミツバチは農業生産にとって死活的なかかわりを持っている生き物なのだ。

日本はミツバチの供給をアメリカからの輸入に頼ってきた。日本土着の蜂は繁殖能力が弱いなどの理由から、農業生産のパートナーとしては相応しくないとされてきたからだ。だが事態がここまでくると、そうもいっていられない。

そこで日本蜂のなかから、マルハナバチなどを選んで、農業用に活用しようとする動きが強まっている。最大の難関は繁殖能力の向上だ。マルハナバチの女王蜂には産卵に先立って半年も休眠する習性がある。これをなんとか変えて、短い休眠でも産卵させられないか、工夫が続けられている。もし産卵がスムーズに行くようになれば、日本の蜂でも十分活躍するのではないか、関係者はそう期待するのだ。


関連サイト:アーモンド栽培と蜜蜂





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このページは、が2010年3月27日 17:25に書いたブログ記事です。

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