日本地下鉄協会編集の「世界の地下鉄第三版」が出版された。現在世界中の都市で運行しているすべての地下鉄について、基本的な情報を網羅したものだ。筆者も地下鉄に関わりの深い仕事をしているので、興味深く読んだ。
この本によれば、2010年現在、地下鉄が走っている都市は世界中で151あるという。初版の2000年時点では115だったというから、この10年間で一段と普及したことがわかる。しかもいわゆる先進国だけではなく、アジアやアフリカの諸都市にまで広がっている。整備状況が著しいのは中国で、現時点で8都市、数年以内には16の都市が新たに仲間入りするという。
世界で最初の地下鉄が走ったのはロンドン、1863年のことだ。そのときにはまだ蒸気機関車だった。トンネルのなかを煙を吐きながら走った。電車を最初に取り入れたのはブダペストで1896年のこと、その後1900年にはパリが、1904年にはニューヨークが電車の地下鉄を走らせるようになり、先進国の諸都市に次第に普及していった。地下鉄をメトロというのは、パリ地下鉄の名称「メトロポリタン鉄道」から来ている。
日本で最初の地下鉄は1927年12月に東京の上野―浅草間で開通した。現在の銀座線の一部である。当時は民間会社たる東京地下鉄道株式会社が建設運営していたが、その後帝都高速度交通営団に引き継がれた。営団は現在の東京メトロである。現在東京の地下鉄は東京メトロが9路線を、東京都交通局が4路線を運営しており、他の都市のようには一元化されていない。
最近の地下鉄は多様化しているようだ。鋼製車両で鋼製レールの上を走る伝統的な方法のほか、ゴムタイヤで走るものやリニアモーターカーが普及する一方、トンネルの深度が深まる事態に伴いシールド工法が一般化するなどである。
ところでこの本は鉄道好きのボランティアによって作られた。その中に筆者の職場に在籍しているものもいる。実は今手にしている本も、その男からもらったものだ。
みな鉄道のことが何よりの関心事で、ひまさえあれば、日本はおろか海外まででかけていって、各地の鉄道を追い掛け回しているという。近く仲間同士でトルコの地下鉄を見に行くそうだ。筆者ならまず第一に、ベリーダンスを見にいくところだ。
ともあれこういう男たちを称して、事情通たちは「鉄ちゃん」と呼んでいる。
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