エドガー・ポーの詩「黄金郷」Eldorado(壺齋散人訳)
派手ななりをした
勇ましい騎士が
晴の日も曇りの日も
長い旅を続けていた
歌を歌いながら
黄金郷を求めて
やがて年をとると
さしもの騎士も
心に影が差してきた
なぜならどこを探しても
見つからなかったからだ
黄金郷といえるような土地は
そしてついに力尽き
進むこともままならなくなった時
影という名の巡礼に会った
そこで騎士は影に訪ねた
いったいどこにあるんだね
黄金の郷エルドラドは
山々の彼方
月の中の
死の影の谷を下り
どこまでも進みなさいと
影は答えた
黄金郷にたどり着きたいなら
ポーがこの詩を書いたとき(1848年)、アメリカはゴールドラッシュに沸いていた。この詩にはそんな風潮を皮肉る意図もあったのだろう。人々は黄金を求めて西へ西へと押し寄せ、黄金の郷エルドラドを探し回った。中には運よく掘り当てたものもあっただろう、だが多くのものは空しい旅の果てに一生を終えた。
ポーは黄金郷を捜し求める人と自分とを比較して、自分もまた彼らとそんなに違わない一生を送ったのだと思わずにはいられなかったのではないか。彼らがついに地上で黄金に出会えなかったように、自分もこの世に理想郷を見つけることはできなかった。
理想とはこの世にではなく、心の彼方、つまりあの世にしか存在し得ないものなのだ。
なお、この詩は Shadow という言葉を効果的に使っている。それによってイメージを膨らませるとともに、音楽的なリズム感をもかもし出している。
ELDORADO. By Edgar Allan Poe
GAILY bedight,
A gallant knight,
In sunshine and in shadow,
Had journeyed long,
Singing a song,
In search of Eldorado.
But he grew old --
This knight so bold --
And o'er his heart a shadow
Fell as he found
No spot of ground
That looked like Eldorado.
And, as his strength
Failed him at length,
He met a pilgrim shadow --
"Shadow," said he,
"Where can it be --
This land of Eldorado?"
"Over the Mountains
Of the Moon,
Down the Valley of the Shadow,
Ride, boldly ride,"
The shade replied, --
"If you seek for Eldorado!"
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