東電福島第一原発事故のあおりで、定期検査を終了しても再稼働できない原発が増え、いま現在国内にある54の原発のうち、37機が停止状態にある。これから定期検査入りする原発が相次ぐことを考えれば、遠からずすべての原発が停止する可能性も出てきた。
ご承知のように、原発は稼働13か月で定期検査が義務付けられている。そのため現在動いている原発も、今年中か来年早々には13か月を経過して、定期検査に入ることを義務附けられている。
検査が終わっても再稼働できないのは、日本の原発行政特有の事情があるからだ。地元自治体のゴーサインが出ない限り、電力会社は再稼働させることができない。だが福島の事故を受けて、地元はどこもナーバスになっており、簡単にゴーサインを出せる状態ではない。
最も大きなネックになっているのが、福島を踏まえた原発の新しい安全基準ができていないこと、また安全について太鼓判を押すための行政体のあり方がまだ定まっていないことだ。
原発の安全基準については、先日IAEAから出された勧告をもとに、これから本格的な基準作りが始まるようだ。また原子力安全行政の組織としては、現在は経産省の内部部局である保安院が担っているものを、経産省から独立した組織に組み替える議論が進んでいる。
どちらも時間がかかる故、検査を終えた原発が速やかに再稼働できる可能性は当分のあいだ低い。このままでは、今年の夏は深刻な電力不足に見舞われる恐れが強い。
だからといって、十分な検証なく、中途半端に再稼働を許してよいという話にはならないだろう。やはり国民の誰もが納得できるような形で、新しい安全基準づくりと、それに基づいた毅然とした原子力行政を確立するのが筋だ。でなければ、日本人が何のために甚大な原子力被害を受けたか、わからなくなる。
政府や電力会社は、こうした事情を十分に踏まえ、責任をもって、かつスピーディに、対応していくべきだ。そうでなければ、日本の原発は国民の支持をとりつけられないこととなり、したがって自然消滅のような状態に追い込まれていくだろう。
与党の諸君も、野党の諸君も、政権をめぐる泥仕合にうつつを抜かしている場合ではない。(写真は九州電力玄海原発)
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