三笠フーズ事件が問いかけるもの

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米の流通業者三笠フーズが引き起こした詐欺事件は、食の安全を巡って、国民に大きな不安を与えた。何しろ政府が食えない米だと烙印を押したものを安く買い取って、それを食用と偽り転売していたわけだから、悪質だ。国民が怒るのも当たり前である。だがこの事件は心情的に反応するだけではすまない、根の深い問題を抱えている。

三笠フーズが政府から買い取った米は輸入米だ。その中で食用に適さずとされ工業用として売りに出したものを、三笠フーズはトンあたり10000円で買い取り、それを35000円で転売していたとされる。通常輸入米の相場はトン当たり80000円だというから、飛ぶように売れたわけである。

政府が外国から米を輸入し始めたのは1993年、WTOの要求に押された形でだった。だが国内生産者の利益を配慮して、その処分先は焼酎などの用途に限定してきた。その結果毎年膨大な米が売れ残って、倉庫に山積みされる事態が生じた。ここまではよくあることで、政治上のコストとも受け取れる事態だった。

ところが小泉政権時代の2003年に、米の流通が自由化され、米を巡る規制の枠が緩められるのと平行して、政府も従来のように政策上の理由から、不要の在庫を抱えたままでいることができなくなり、売れ残りの輸入米を損失覚悟で市場に出すようになった。

だが食えない米まで市場に出すのであるから、それが食用に転売されないように、何らかの措置をとるべきだったのはいうまでもない。実際販売先の報告や政府による立ち入り検査などの制度は設けられたようであるが、それがほとんど機能していなかったようなのだ。

農水省の説明によれば、政府は三笠フーズに対して2006年以来96回も立ち入り検査をしたというが、何らの異常も発見できなかった。これでは目をつぶって検査したのかといわれても仕方あるまい。

恐らく農水省の側にも及び腰になるような事情が働いたのだろう。売れ残り米はそう簡単には売れない。それを買ってくれるのは、規制の対象であるというよりは、お得意様扱いにならざるをえない、恐らくこうした事情が農水省の検査を及び腰にしたのだろう。

つまり食う者の立場を無視した、流通優先の姿勢が政府側にあって、それが悪徳業者をはびこらせる原因となったのではないか。こういう見方が成り立ちうる。

農水省といえば、国民の食の確保とその安全に責任を持つ官庁だ。その使命を果たすためには、国内の農業を振興させ、しかも安全が担保されるように目を光らせなければならない。

ところが日本の農業の実態をみれば、生産者は青息吐息の状態にある。そのうえ、やれ自由化、やれ規制緩和と称して、輸入した食品の安全さえも保障できないでは、一体どこを向いて仕事をしているのかと、言いたくないことも言いたくなるではないか。


関連リンク:日本の政治と社会

  • 世界がコシヒカリを作り始めた:日本の米の行方

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