FX取引で大損する人たち

FXとは Foreign Exchange の略で、その名のとおり外貨を対象にした投資である。為替の変動を利用して、そこから生ずる差益をねらおうというものだ。普通外国為替証拠金取引などと訳されている。

投資家はこの取引を仲介する業者に一定の金を証拠金として預ける。業者はその金を元手に外国為替を売買し、一定の期間内に生じた為替の差を決済する。儲かれば利益を投資家に還元し、損失が出れば証拠金をその穴埋めに使うという仕組みだ。

これなら個人が外国為替を売買するのと余り違いがない。違いをもたらしているのは、この手法が金融レバレッジという手法を導入していることだ。レバレッジとは元手の金の数倍、場合によっては100倍もの資金を運用できるという仕組みで、一種の信用取引である。この数年の間に、世界の金融取引にビルトインされ、金融市場の膨張を促進してきた原動力だ。金融バブルをもたらした最大の原因であるといわれている。

レバレッジのおかげで投資家は、場合によっては預けた金の100倍の投資が可能になる。100万円の元手で1億円の取引ができるわけだ。その結果為替レートが一定期間内に1パーセント変動すれば、預けた額と同じ100万円が利益になったり、損失になったりする。究極のハイリスク・ハイリターンなわけである。

こんなところから一攫千金を夢見る一般投資家の人気を集め、それを当て込んだ業者も乱立した。以前は外国為替の取引は銀行などの一部金融機関に限定されていたものが、小泉時代の規制緩和によって、誰でもできるようになったからだ。そこへ悪質な業者が参入し、でたらめなことをし始めた。それが今回の騒ぎにつながったわけだ。

悪質な業者のやり方は大体共通している。客の金と自分の金とを区別しないことだ。本来客からあずかった金は、別途に積み立てた上で運営しなければならないところを、この連中は自分自身の取引のために横流しした。業務上横領に似た行為を行なったわけである。

世界の金融市場がバブルに沸いていた間は、それでも馬脚を現わさずにすんだ。ところが今回の金融危機で外国為替相場がめちゃくちゃな様相を呈するようになると、一気にリスクが表面化し、莫大な損失を抱えて倒産する業者が続出した。その結果業者に金を預けた投資家には一銭も戻ってこない事態が生じた。

FX取引には、買ってから売るという普通の方法とは逆に、売ってから買い戻すという手法もある。つまり自分のものではないものを空売りして、それを後で買い戻すというやり方だ。これを活用すれば、例えばドルが下落したからといって、損をするばかりとは限らない。智恵の使い方次第では、世界の金融危機を逆手にとって儲けることもできる。

理屈の上ではそうであるが、予想を遥かに超えた為替の変動は、実際には投資家を混乱に陥れ、損をさせることが多いものなのだ。

今回のFXをめぐる損失騒ぎは、日本の金融システムにいい加減な部分が多いことを、人びとに気づかせたに違いない。

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