プーチンの与党「統一ロシア」の広告塔のような役割を果たしてきたプリマ・バレリーナのアナスターシヤ・ヴォロシコーヴァ(Анастасия Волочкова)が、プーチンに向かって公然と反旗を翻し、野党の味方をすると宣言した。
アナスターシヤ・ヴォロシコーヴァはプーチン以下のクレムリン・アパラーチキにとってはアイドル的な存在だった。彼女は美人だし、頭もよいし、ロシアの女性としては理想の存在だった。そんな彼女につれなくされるのは、誰にとっても痛手というべきだろう。
アナスターシヤ・ヴォロシコーヴァがなぜ、プーチンに敵対する気になったのか、真相は明らかでないが、どうもホドルコフスキー裁判に象徴される、ロシアにおける人権抑圧が、彼女の良心を刺激したようだ。
彼女は、統一ロシアの広告塔といっても、自分から進んで入党したわけではない。2005年に、ホドルコフスキーが有罪とされたときに、その判決を支持する文化人の名簿に、統一ロシア側がアナスターシヤの名前を勝手に付け加えたのだった。それ以来、彼女は統一ロシアの一方的な求愛を受けてきたというわけなのだ。
だがもうそんな歪んだ愛はまっぴら、というのが彼女の気持ちの真相らしい。このたびのホドルコフスキー裁判の蒸し返しについても、彼女はこれを「政治的茶番劇」だとこきおろし、正義はプーチンではなくホドルコフスキーの側にあるといった。
ところで挑戦状を受けた形のプーチン政権は、アナスターシヤをロシアの演劇シーンから事実上抹殺することで、答えようとしている。
だが権威によって迫害された経験を持つ彼女は、そんな脅しにはへこたれない。2000年に彼女は、ボリショイ・バレー団から、身長が高すぎ(170センチ)、体重が重すぎる(49.5キロ)という理由で、プリマ・バレリーナを下ろされたが、その後は演劇やテレビに進出し、国民的な大スターになった。
いまでも彼女はロシアを代表する女優として、世界的な人気を誇っている。ロシアで干されれば、外国に出かけていく選択肢もある。いくらプーチンでも、彼女の才能を抹殺することはできないだろう。
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