「福島原発暴発阻止行動プロジェクト(Skilled Veterans Corps)」をご存知だろうか。第一線を退いて年金生活をしている退役技術者たちが、福島原発の復旧作業にヴォランティアとして参加したい、そんな思いを込めて始めた活動だ。彼らのWEBサイトには、活動の趣旨が次のように書かれている。
福島第一原発の事故現場はいまだに深刻な問題を抱えている。そこで「最悪のシナリオを避けるためには、どのような設備を作ることが必要か、放射能汚染を減らすためにどうしたらよいか、などなど、数多くの技術的課題があることはもちろんです。この点についても日本の最高の頭脳を結集した体制ができていないことは大きな問題です。さらにもう一方では、最終的に汚染された環境下での設備建設・保守・運転のためには、数千人の訓練された有能な作業者を用意することが必要です。現在のような下請け・孫請けによる場当たり的な作業員集めで、数分間の仕事をして戻ってくるというようなことでできる仕事ではありません。」
「身体の面でも生活の面でも最も放射能被曝の害が少なくて済み、しかもこれまで現場での作業や技術の能力を蓄積してきた退役者たちが力を振り絞って、次の世代に負の遺産を残さないために働くことができるのではないでしょうか」
こうした問題意識を持って、ぜひ福島原発の事故処理と国の再生に向けて貢献したい、彼らの多くはそんな気持ちからこの運動を立ち上げ、そこに参加した人々だ。
この会がたちあがると、早速諸国の有意の人々が注目し、世界に向けてこの会の情報を発信するようになった。今までに、BBC,CNN,TIMEなどのメディアもこの活動を取り上げて紹介してきた。
TIMEのインタビューを受けて、会長の山田恭暉(72)さんは次のようにいう。
我々は日本の戦後復興の中で大きな恩恵を受けてきた。いまはその恩恵を若い人たちのためにお返しする時期だと思う。我々の多くはすでに60歳をはるかに超え、残された寿命もそう長くはない。かりに原発事故現場で被爆したとしても、ガンにかかるには20年とか30年とかの時間がある。若い人たちと違って、我々は被爆のリスクが相対的に小さい。この利点を逆手にとって、原発現場に身を挺し、国のために最後のひと働きをしたい。
こんな言葉を聞いた記者たちは、みな一様に彼らの崇高さをたたえている。日本人は姨捨の伝説を持っているが、これらの老人たちは自分の意思で身を捨てようとしているのだ、と云々。
今のところ彼らは、東電や政府当局から原発の復旧要員として正式に認められるには至っていない。彼らの心意気に感じて、ぜひともひと働きの場を与えてあげて欲しいものだ。(映像は山田恭暉さん:BBC)
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