イスラム社会のクリストフォビア(Christophobia)

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ヨーロッパ諸国ではイスラモフォビアともいうべき反イスラム運動の広がりが問題になっているが、その裏面というか、イスラム社会でもクリストフォビア(Christophobia)というべき動きが広がっているという。それは時と場合によっては、過酷な宗教迫害となって、深刻な人権侵害、いやそれ以上に、暴力的な殲滅という様相さえ帯びるに至っている。その様子を、Newsweek 最新号のカバーストーリーが取り上げている。The Global War on Christians in the Muslim World By Ayaan Hirsi Ali

クリストフォビアはここ数年の間に、北アフリカから中近東を経てインドネシアに至る広範な範囲で生じてきた。民衆による自然発生的な異教徒迫害のかたちをとっているものもあれば、政府が公然と小数派であるキリスト教徒を迫害するところもある。

アフリカのナイジェリアでは、ボコ・ハラーム(Boco Haram)という運動組織がキリスト教徒を対象に様々な攻撃を仕掛け、2011年には510人のキリスト教徒を殺害し、350のキリスト教会を焼き払った。今年はすでに54人ものキリスト教徒が犠牲になった。

スーダンでは2003年以来の内戦を通じて、スンニー派のイスラム教徒がキリスト教徒を大々的に殺害してきたが、内戦が終了したはずの現在でも、キリスト教徒の殺害は終わっていない。

エジプトではムバラク打倒後の政治的な混乱の中で、イスラム教徒によるキリスト教徒の迫害~教会の焼き討ち、女性のレイプ、四肢の切断そして殺害が相次いでいる。

イラクでは2003年以降、900人以上のキリスト教徒が殺害され、70の境界が焼き討ちされた。そのため大勢のキリスト教徒がイラクを脱出し、2003年に約百万人いたとされるキリスト教徒が、いまでは50万人以下に減った。

パキスタンでは、キリスト教徒の迫害は、政府によって公然と行われている。イスラムによって課された市民の義務を果たさないものは、法によて罰せられることになっているからだ。このため些細なことで、違法を糾弾されて刑に処せられる人が後を絶たない。

サウジアラビアでも、政府による公然としたキリスト教徒への迫害が起きている。ここではキリスト教の儀式そのものが禁止され、それに違反すると処罰される。サウジアラビアには大勢のキリスト教徒が出稼ぎに来ているが、彼等には礼拝の自由も許されていない。

インドネシアは、イスラム社会の中では最も穏健で、宗教的な寛容があるとされてきたが、ここでもキリスト教徒への迫害が見られるようになった。

ざっとこんな具合である。かつてのオットマン・トルコでは、帝国内のさまざまな宗教は共存が許されていたが、今日のイスラム社会は宗教的な寛容さに欠けてくるようになった。だがこうした動きが、西欧のキリスト教社会で問題として取り上げられることはあまりなかった。いまこそ、この問題に正面から取り組み、宗教的な寛容が実現されるように努力する必要がある、執筆者はこう結んでいる。(写真はイスラム教徒の攻撃によって殺害されたキリスト教徒を悼むエジプトでの集会:Newsweekから)





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このページは、が2012年2月10日 19:10に書いたブログ記事です。

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