還暦を迎えた中華人民共和国

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この日(2009年10月1日)は、中国大陸に中華人民共和国が建国して60周年にあたる記念すべき日だ。中国では60年という数字は還暦を現すものとして特別の意味を持っている。その記念すべき日に、大方の中国人は、世界の大国へと成長しつつある祖国の姿を、誇りを以て見据えたのではないか。

北京では天安門広場を舞台に一大デモンストレーションが行われた。圧巻は二つ。ひとつは巨大な軍事デモンストレーション(上の写真:ロイター提供)、もうひとつは56の民族が参加しての、華やかなパレードだ。

軍事デモンストレーションには、いまの中国の国力を反映するかのように、高価な近代兵器が並べられたほかに、膨大な数の軍人たちが、一糸乱れぬ行進を披露した。また少数民族の人々によるパレードは、民族間の友好をことさらに強調して見せた。いづれも今日の中国を象徴するような眺めに見えた。軍事力は中国共産党の支配力の源泉であり、少数民族問題は、そのアキレス腱となるものだからだ。

60年前毛沢東に率いられた共産党が、蒋介石が率いる国民党との内戦に勝利し、中華人民共和国の樹立を宣言したときには、中国は長い植民地支配と抗日戦争のために疲弊して、人々の生活はどん底の状態にあった。それから60年、中国の歩みは順調なものではなかった。

前半の30年は、権力闘争や文化大革命などによって、中国は近代化には程遠い状態に置かれ続けていた。国際社会の中で孤立することが多く、隣人たるわれわれ日本人にとってさえ、存在しないも同様な有様だった。それが鄧小平による改革開放路線をきっかけにして、急速な近代化に成功し、あっというまに世界の巨大パワーにのし上がった。

いまや中国は、経済的にも政治的にも、世界の動きに重大な影響力を及ぼすようになった。国民総生産は近いうちに日本を抜いて、世界第二位になることが確実だ。

こうした中国の勢いを前に、アメリカも中国との関係を重視し始めている。オバマ大統領は、これからはアメリカにとって中国は最も重要な国になるだろうと明言してもいる。

中国は膨大な貿易黒字を背景に、2兆ドルにのぼる巨大な外貨準備をもつにいたった。これまではその大部分をアメリカの国債購入につぎ込み、アメリカの財政赤字を下支えするような役割を果たしてきた。アメリカにとって中国が重要な国になっている理由のひとつだ。

もうひとつは巨大な市場としての、中国のポテンシャルだ。今後は単に物を作って海外に輸出するだけではなく、巨大な内需を背景に、世界にとって重要な市場としての役割がますます高まっていくと期待されている。

政治的な影響力も大きくなってきている。中国はもともと国連の常任理事国だ。今後はそうしたステータスに加え、膨大な人口を要する巨大パワーとして、世界の政治状況にさまざまなインパクトをもたらしていくと考えられる。

日本はそんな中国と、今後いっそう深い関係を築き上げていく必要があろう。

世界のスーパーパワーになりつつあるといっても、中国はまだまだ多くの問題を抱えている。経済的に豊かになったといっても、一人当たりの国民所得はまだ先進国並みとはいえない。一方国民の間には深刻な格差の問題が横たわっている。少数民族の問題もある。政治のあり方をめぐる問題もある。とても一流国家だと胸を晴れる状態ではない。






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このページは、が2009年10月 1日 22:13に書いたブログ記事です。

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