エレジー Élégie :マルスリーヌ・デボルド・ヴァルモール

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マルスリーヌ・デボルド・ヴァルモール Marceline Desbordes=Valmort の詩「エレジー」Élégie(壺齋散人訳)

  夜 風がわたしの竪琴を吹きすぎる
  竪琴はわたしのそばで目覚めていて
  悲しく切ない泣き声をあげているの
  あなたのことを求め続けているの
  わたしに代わってあなたの名前を呼び続けているの
  なのにあなたは人の気持ちを踏みにじるばかり
  竪琴の切ない思いを聞こうともしない
  あなたの名を求め続けるわたしの歌を聞こうともしない

  竪琴はもうあなたの名を呼ぼうとはしない
  語りかけることも歌いかけることもしない
  あんなにも震えながら歌っていたのに
  わたしの心の震えそのままに震えていたのに
  わたしはそんな竪琴の妙なる響きに
  愛されていることの幸せを託していたのに!
  わたしは信じていたのよ これほどの愛は
  だれにとっても甘い夢のようなものだと

  ああ いっそ甘い夢を見ながら死んでしまいたかった
  夢の中であなたの恋人でいられるままに
  いっそ夢から覚めなければよかった
  目覚めながら何も信じられないよりは


マルスリーヌ・デボルド・ヴァルモール Marceline Desbordes Valmore の処女詩集は1819年に発表された「エレジーとロマンス」だ。後に他の詩とあわせて1930年の「ポエジー」にも収録された。

マルスリーヌは生涯を通して愛を歌い続けた。独身の時代には恋人への愛を歌い、結婚してからは夫への愛を歌い、子どもが生まれてからは子どもへの愛を歌い、老いてからは人間への愛を歌った。

そんな彼女の処女詩集が挽歌で埋められているのは意外なことだ。だが彼女にとって挽歌とは死んだ人に捧げる歌ではなく、失った愛を惜しむ歌なのである。


Élégie  Marceline Desbordes Valmore

  Il fait nuit : le vent souffle et passe dans ma lyre ;
  Ma lyre tristement s'éveille auprès de moi :
  On dirait qu'elle pleure un tourment, un délire ;
  On dirait qu'elle essaie à se plaindre de toi ;
  De toi, qu'elle appelait pour m'aider à t'attendre,
  Qui la rendis si vraie, et par malheur si tendre !
  Car tu ne peux ravir à ses accords touchants
  Ton nom, toujours ton nom, qui courait dans mes chants.

  Elle ne le dit plus, ce nom doux et sonore,
  Elle ne le dit plus, elle le pleure encore !
  Combien elle a frémi, combien elle a chanté,
  Sous les prompts battements de mon cœur agité,
  Alors que, dans l'orgueil des amantes aimées,
  Je confiais mon âme aux cordes animées !
  Je croyais que les cieux ne donnaient tant d'amour
  Que pour en pénétrer une autre âme à son tour !

  Ah ! j'aurais dû mourir, doucement endormie
  Dans cette erreur charmante où j'étais ton amie.
  Devrait-on s'éveiller de ces rêves confus,
  Pour y penser toujours, et pour n'y croire plus ?


関連サイト:フランス文学と詩の世界





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