ネタニアフ・イスラエル首相がアメリカ議会上下両院合同会議の席上、中東和平に関するイスラエルの主張を演説した。先日の米・イスラエル首脳会議におけるオバマ大統領からの提案に答えたものだ。一口に言えば、あらためて「ノー!」を突きつけた形だ。
ネタニアフ首相は、パレスチナがイスラエル国家の存立を認めることを条件にイスラエルとの交渉を再開し、そのなかで、第三次中東戦争(一九六七年)前の境界線を交渉の出発点とし、土地の交換による国境画定を求めたオバマ米大統領の提案を一応は尊重するとしつつも、次のような条件を主張した。
1 パレスチナ難民のイスラエル領への帰還は認めない
2 併合地・東エルサレムは返還しない
3 パレスチナ国家は武装解除し、イスラエルがヨルダン川沿いに軍事力を長期的に維持する
何のことはない、これらは現在の情況を将来に向かって固定化しようとの意思表明に過ぎない。
2の併合地・東エルサレムとはヨルダン川西岸のことを指す、そこにイスラエルが進めてきた入植地を永遠にイスラエル領土に組み込むということだ。1の意味はそのヨルダン川西岸地域にパレスチナ人の帰還を認めないということだ。またヨルダン川西岸の安全確保のために、ヨルダン川に沿ってイスラエル軍を常駐察させるいっぽう、パレスチナ人は武装解除するという。
これでは、パレスチナ人の全面的な犠牲のもとで、イスラエル国家によるパレスチナ占領の永久化を目指すといっているに等しい。第三次中東戦争以前の状態を出発点とするどころか、その後のイスラエルによる占領を永久化しようとするものにほかならない。
つまりネタニアフは先日の首脳会談でオバマに対していったことを、アメリカ国民全体に向かっていったというに尽きる。
ネタニアフは、アメリカは絶対にイスラエルを見捨てないとの確信をもって、その立場からオバマの主張を一方的に退けたのだろうか。せっかく差し伸べられた手をこんな形で返すのであるから、ネタニアフは少なくともオバマとの間で全面対決も辞さないという意思表示をしたことになる。その意思表示が、アメリカ国民には理解されるだろうと踏んでいるなら、それは見込み違いになる可能性を十分にはらんでいる。
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