復活する蒸気機関車C6120

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静態保存されていた蒸気機関車のうち比較的保存状態の良いものを選んで機能を復活させ、鉄路の上を再び走らせようという壮大な試みが成功した。その復活劇の一部始終を、NHKが山田洋二監督とともに追跡した記録を、放映した。題して「復活――山田洋二SLを語る」

選ばれたのは伊勢崎市華蔵公園に静態保存されていたC6120。2009年の12月にJRの大宮工場に運び込まれ、そこでいったん全面解体したのちに、傷んだ部分を補修し、組み立てなおした。部品の数は約2万点。その一つづつを徹底的に補修し、つなぎ合わせるという作業は、人間の感による手作業で、気の遠くなるようなプロセスだった。そのプロセスの一部始終に山田監督は立ち会ったという。

山田監督は満州の大連で生まれ育った。そこで見たアジア号などの機関車にあこがれるようになり、いわゆる鉄道少年になった。戦後日本に戻って映画を作るようになると、節々の場面で蒸気機関車が煙を吐きながら走っている映像を挿むというマニアぶりだった。

だから今回C6120の復活劇に立ち会うよう誘われた時は二つ返事で了解した。何しろ巨大な蒸気機関車がすべて解体されたうえで、最終的には動く機関車としてよみがえるわけだから、鉄道少年だった人にとっては、夢のような話だったろう。

ものの本によれば、C61系統の機関車は、昭和22年から24年にかけて33台作られた。戦後復興の中で客車が圧倒的に不足していた事態に対応するためだったが、新しい機関車のモデルはなかなかGHQの許可が下りなかったので、従来からあった貨物車D51系統のボイラーを転用して作ったという。

刻々と進んでいく復旧作業を画面で追いながら、こうした復活を担える人材がJRの技術者の中に残っていたということに、筆者はいたく感心した。こうした人々がいたからこそ、今回の復活劇も成功したわけだ。

なにしろ部品のほとんどは錆びついている。なかには酸化して穴の開いた部品もある。それらを溶接などの技術を用いて復旧させ、新たな機能に耐えるようにする。そこが一番肝心なところだ。部品は一つでも欠けたら、機関車は出来上がらない。

圧巻は完成のしるしとして行われる吹き試しというものだった。ボイラーから発生させた蒸気を、機関車の穴という穴から噴出させるものだ。

汽笛の音を合図に蒸気が充満し、それが機関車のすべての穴から噴出する。その映像を見ていると、機関車は人間の身体のイメージと重なり、目、耳、鼻、口、尻、尿道など人体のあらゆる穴から煙がでてくるような錯覚を覚える。穴だけではない、頭からも膨大な湯気が湧きあがるのだ。





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このページは、が2011年7月17日 19:07に書いたブログ記事です。

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