3.11から半年が過ぎた。一口で半年と云うが、被災した方々にとっては辛くて長い時間だったのではないか。というのも、復興が順調に進んでいるとはとうていいえず、現場にはまだ瓦礫が積み重なった荒涼とした光景が広がる一方、仮設住宅にも入れずに不自由な生活を強いられている人々が依然多く存在する、そんな状況の中で、未来に確固たる希望を持てないでいる人が多いだろうからだ。
何故復興が順調に進まないのか。被災の規模が甚大だったからというのは、言い訳に過ぎない。やはり、国や県をはじめ、復興の任に当たる人たちが、相応の責任を果たすことが肝心なのに、それがうまく機能していない現実があるからではないか。
NHKの報道番組「シリーズ東日本大震災 追い詰められる被災者」が、そんな被災者たちの辛い境遇と、うまく機能していない行政の実態にスポットをあてて、復興への道筋は如何に有るべきか、視聴者に問題を投げかけていた。
被災地の人々はこれまでの長い歴史の中で、いく度も津波災害を経験し、そのたびに復興への模索を続けてきた。それでも繰り返し同じような災害に見舞われてきたのは、目の前の生活をどうするかに振り回されて、抜本的な災害対策を取ることができなかった現実があった。
今度こそは、目先の利害ではなく、悠久の視点に耐える街づくりを行う、千載一遇のチャンスでもあったはずだ。人々は自分が身を以て体験した恐怖を踏まえて、未来に向けて安全な街づくりを行う、それを国、県、市町村と云った行政機関がしっかりと支援する。これが今回の震災からの復興に向けての基本的な考え方だったのではないか。
だがその考え方が、どうもうまく実現されていない。被災地の人々には、展望のない未来に絶望して、被災の現場で住宅や店舗を再建しようとする人も現れた。これは不幸な動きだ。
国が整理した復興のビジョンは、次の通りだ。復興にかんする基本的な理念をまとめた復興基本方針を国が作る、それに基づいて具体的な復興のあり方を定めた復興計画を県が作る、そして市町村は住民の生の声をまとめながら、復興事業を推進していく。
復興基本方針はなんとか7月には策定された。ところが県や市町村がそれに基づいて具体的な計画を定めようとすると、ネックがかかってなかなか前へ進まない、こういう現状が厳然としてあるらしい。つまり、国が地元被災地の努力に水をさす実態があるというのだ。
具体的にはどういうことか。たとえば、大船渡市では、高台への町ごと移転と云った抜本的な対策をあきらめる代わりに、二線堤という二重の堤防で街を津波から守ろうとする計画を作ろうとしたところ、それに対する国の支援策がないことがわかって、断念せざるをえなかったという事情があったそうだ。
これは地元の熱意を、国が邪魔すると言うか、脚を引っ張っている例の典型だという。
これに限らず、復興に向けての国の姿勢が、どうも及び腰というか、少なくとも熱心ではない。そんな空気が伝わってくるというのだ。
NHKは、番組の中に復興担当の平野大臣を登場させて、いったいどうなっているのかと追及していたが、平野大臣の話を聞くと、どうも言い訳ばかりしているように聞こえて、担当大臣としての熱意に欠けているのではないかと思わせるところがあった。
中央省庁の役人たちには多くを期待できないかもしれないが、それを国民の利益実現に向けて操縦するのが政治家の役目というものだろう。政治家が及び腰になっていたら、何事も前には進まない。
番組をみて、こんな風に感じた次第だ。(写真は津波に飲まれた名取市:ロイター・共同)
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