フランス語で未婚の女性をさしてつかう「マドモワゼル(Mademoiselle)」という敬称が女性を差別しており我慢できないと、フランス国内のフェニミスト・グループが、撲滅に向けて立ち上がったということだ。
ヨーロッパの大部分の言語では、男に対する敬称は一つしかないが、女性に対しては既婚か未婚かで差別しているのが普通だ。英語もドイツ語もイタリア語もそうだし、ロシア語などに至っては、女性の敬称はもとより、言語活動のあらゆる場面で、小うるさいくらい性差にこだわる言語体系を持っている。
英語圏では、ミスとミセスの差別を解消しようとしてミズという新しい言葉が作られ、このおかげで女性たちは自分が既婚か未婚かについていちいち説明する必要がなくなったといって喜んでいるそうだ。ドイツでも未婚女性をさすフロイラインという言葉は公文書からは追放され、フラウという言葉に一元化されてきた経緯がある。フランスはそうした動きから一時代遅れている、そうフランスのフェミニストたちは言うのだ。
たしかに女性に話しかける際に、その人が既婚か未婚かについて気を使わねばならないのは、女性だけでなく、男性にとっても不都合だろう。
筆者が先日フランスを旅行した際には、女性に話しかける時には、その人が明らかに未婚であると思料されるケース以外には、だいたいマダームを使った。それで全く不都合はなかった。フランスにはどうやら、マダームと云われて、「いや私は結婚していません」などと気色ばむ女性はいないようなのだ。
日本語を含めて東洋の諸言語には、こうした悩みの入り込む余地はないようだ。日本語の場合には、男性と女性の差別化さえ図らない。男性の田中さんも女性の田中さんも、みな一様に田中さんですむ。
コメントする