森林だけでなく原住民も絶滅の危機:ブラジルのアワ族

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今の時代にこんなことがまかり通っているとは、大いなる驚きだ。アマゾン周辺の森林地帯が消滅の危機にさらされていることはかねて伝え聞いていたが、その過程の中で、森林とともに暮らしてきた原住民が、生活の糧を奪われるばかりか、命まで奪われて、部族全体が絶滅の危機に瀕しているというのだ。They're killing us': world's most endangered tribe cries for help By Gethin Chamberlain The Observer

オブザーバー紙の記事によれば、ブラジルの北東部に広がるマラニャン州の森林地帯に開発の波が押し寄せ、かつてのジャングル地帯が裸の荒野に変りつつあるばかりか、そのジャングルで文明から隔絶して生きてきた原住民アワ族が、違法な森林伐採業者や合法的な開拓者たちによって、殺されるケースが相次いでいるというのだ。

森林伐採業者や開拓者たちは、ガンマンを雇い、森林破壊に抵抗するアワ族の人々を殺害しているという。アワ族は、かつては原住民の大きな単位をなしていたが、いまや355人まで人口を減らし、このままでは近く絶滅する恐れがある。ブラジル政府は、彼らの保護に向けて行動を開始すべきだ、人権団体 Survival International はこう訴えている。

こうした事態が起きるきっかけとなったのは、州内陸部カラハス山地の鉄鋼鉱山開発計画だ。1982年に、EECと世界銀行がこの計画に資金提供を約束すると、早速内陸部と沿岸部を結ぶ鉄道が敷かれ、道路ができた。それとともに開発者がジャングル地帯に入り込んできて、森林を伐採しだした。このビジネスにはヤクザな連中も加わって、森林伐採に抵抗する原住民を次々と殺していったというのだ。

アワ族はこれまで、他の人間たちとの接触を避け、森林の奥深くで、孤立した生活を営んできた。彼らの生存を支えていたのは森の富だ。彼らはそれらの富を、文明人たちの蹂躙から守るために必死に抵抗した。それが邪魔者扱いにされて、殺されるようになったわけだ。

記者がインタビューしたカラピルという名のアワ族の男性は、次のように語ったという。

"I hid in the forest and escaped from the white people. They killed my mother, my brothers and sisters and my wife," he said. "When I was shot during the massacre, I suffered a great deal because I couldn't put any medicine on my back. I couldn't see the wound: it was amazing that I escaped - it was through the Tupã [spirit]. I spent a long time in the forest, hungry and being chased by ranchers. I was always running away, on my own. I had no family to help me, to talk to. So I went deeper and deeper into the forest.
"I hope when my daughter grows up she won't face any of the difficulties I've had. I hope everything will be better for her. I hope the same things that happened to me won't happen to her."

これはまさしくジェノサイドというべき事態である。

ブラジル政府がどれだけアワ族の実態を把握しているのか、よくはわからない。国家にとってはほとんど無害だったので、恐らく長い間無視されてきたのだろう。だから違法業者による彼らの殺害が横行しても、それを取り上げて弾劾する者もいなかったのだと思われる。

しかし、かりにも文明国であるならば、こんな無法な事態を放置していて、いいはずがない。(写真はオブザーバーから)






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このページは、が2012年4月22日 20:03に書いたブログ記事です。

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