月夜憶舍弟:杜甫を読む

| コメント(0) | トラックバック(0)

杜甫の五言律詩「月夜に舍弟を憶ふ」(壺齋散人注)

  戍鼓斷人行  戍鼓人行斷え
  秋邊一雁聲  秋邊一雁の聲あり
  露從今夜白  露は今夜より白く
  月是故鄉明  月は是れ故鄉の明かり
  有弟皆分散  弟有れど皆分散し
  無家問死生  家の死生を問ふ無し
  寄書長不達  書を寄せど長く達せず
  況乃未休兵  況んや乃ち未だ兵を休めざるをや

戦争の響きで人の往来も絶え、秋の野辺には雁の鳴き声が聞こえるばかり、夜露がますます白くなり、月の明るさは故郷のそれと同じだ

弟があっても皆分散し、家がなくたったため消息を得る手がかりも無い、手紙を書いても何時までたっても返事がない、戦乱が収まらないではやむを得ぬことだ


戍鼓とは城郭を守る兵士が時を告げるために鳴らす太鼓のこと、杜甫はこの音を秦州の城内で毎日聞いていたのかもしれない、第三節にあるとおり時節は白露つまり秋の初めだ、

この詩の中で杜甫は、弟たちが散り散りばらばらになって、消息も得られないことを嘆いている、世の中はいまだ戦乱にあけくれ、ひとびとは家を失って逃げ惑うしかなかった

杜甫はこの秦州にも長く腰を落ち着けることができなかった、わずか二ヶ月でこの地に見切りをつけ、蜀へ向かって更に避難の旅を続けることになる。


関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説





≪ 宿贊公房:杜甫を読む | 漢詩と中国文化 | 夢李白二首其一 杜甫 ≫

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://blog.hix05.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/2115

コメントする



アーカイブ

Powered by Movable Type 4.24-ja

本日
昨日

この記事について

このページは、が2010年2月17日 20:10に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「宿贊公房:杜甫を読む」です。

次のブログ記事は「ツタンカーメン Tutankhamun の死因:近親婚とマラリア」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。