高い言語能力がアルツハイマー病を抑止する

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加齢による脳の器質上の変化がアルツハイマー病を引き起こすことはよく知られている。脳内にプラークと呼ばれる老廃物がたまり、それが脳の神経組織を阻害して、認知障害や譫妄などの精神障害を引き起こすものだが、人によっては、脳に明らかな変化が現れているにかかわらず、そうした障害が起きない人々もいる。

なぜこのような差が現れるのか。アメリカの神経病理学者アイアコーノ Diego Iacono 教授は、人生の早い時期から高い認識能力を確立した人間の個体は加齢による認知能力の低下から免れやすいという仮説を立てている。実際そのような人々の脳を分析してみると、脳内の神経細胞が死滅する一方、残存の部分が活性化し、欠けた部分を補っている。その結果トータルとして認知能力の低下が抑制されるらしいのだ。

教授は、修道院の尼僧たちの生活歴を追跡することによって、彼女たちの若年の時の知的能力と、老後の認知障害の度合いとの関連を調べてみた。修道院は一定の集団が生涯を共にする空間だ。だから比較的純粋な形で、生活歴を経年調査できるのである。

その結果若い頃に洗練された言語能力を発揮していた尼僧は、老後認知障害に陥る度合いが低いことがわかった。逆にいうと、明らかにアルツハイマー病の器質的な兆候を示しているもので、認知障害に陥らないものの割合は、高い言語能力を若年の頃より発揮している人の場合、通常のものより20パーセントも高かった。

言語能力の高さが認知障害を抑制するメカニズムはまだよくわかっていない。そのような人の脳は、欠落した機能を他の機能が代替するのではないかと推測されており、その過程で言語中枢が重要な働きをしているのではないかと類推されているが、決定的なことはわかっていない。

一方欠落した神経組織を他の機能で代替する過程については、遺伝子が重要な役割を果たしていると仮定する説もある。APOE2と呼ばれる遺伝子だ。これが言語中枢の働きとどのようなかかわりがあるのかについても、いまのところはよくわかっていない。

いづれにせよ、高い言語能力が脳を活性化させ、その結果認知障害の進行を遅らせる、ここまではいえるのではないか、そうアイアコーノ教授は結論する。

(参考)Can Language Skills ward off Alzheimer's By Tiffany Sharples





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